岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

嘘から生まれるロマンチックコメディー

2019年12月01日

英雄は嘘がお好き

©JD PROD - LES FILMS SUR MESURE - STUDIOCANAL - FRANCE 3 CINEMA - GV PROD

【出演】ジャン・デュジャルダン、メラニー・ロラン
【監督・脚本】ローラン・ティラール

偉大な軍人にも名家の令嬢にもあるウラの顔

 フランス・ブルゴーニュの丘陵を白馬が駆ける。馬上には赤い軍服姿に口髭も凛々しいヌヴェル大尉(ジャン・デュシャルダン)がいた。到着したのはボーグラン家の豪邸で、家人は揃って大尉の到着を待ちかねているが、その主役は次女のポリーヌだった。

 期待の充満した歓迎の空気の中で、大尉はポリーヌにプロポーズする。歓喜に湧いたのも束の間、ヌヴェル大尉は戦地へと向かうことになってしまう。

 悲嘆に暮れるポリーヌを慰めるのは長女のエリザベット(メラニー・ロラン)だった。婚約者は戦地から戻る兆しもなく、便りすら届かない。健気な妹のため、エリザベットは差出人を偽った手紙を書き、妹に届けることになる。しかし、その文通は思いのほか長引くことになり、もはや限界を悟ったエリザベットは、戦地で奮闘活躍する大尉を戦死させてしまうことで、その幕引きを図るのだった。

 そして3年後、エリザベットは、見るも可哀な乞食のような風体で帰還したヌヴェル大尉と遭遇してしまう。

 ヌヴェル大尉は、エリザベットが嘘で創造した英雄とはほど遠い存在に落ちぶれていたが、ここから2人の共同作業による、嘘に嘘を重ねた英雄伝説の捏造話へと発展していく。

 堅物と見えたヌヴェルは天性の詐欺師ぶりを発揮して、エリザベットの想定を超えて暴走する。受けて立つエリザベットも、ただ見過ごしているわけでもなく、ヌヴェルを押さえ込む策士ぶりを発揮するのだが…。

 フランス産のコメディーは下ネタありで、ドタバタ気味なのに目をつぶっていただければ、爆笑とまではいかないものの、存分に笑いを誘い楽しめる。

 ヌヴェルを演じるのはオスカー俳優ジャン・デュシャルダンで、ギリギリの品格を備えた怪演。エリザベットを演じたメラニー・ロランは、男嫌いの非婚主義の女性像を美しく、時に可愛らしく好演して映画を支えた。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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