岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

YouTuberだった監督が、10代の葛藤や苦悩を背伸びする事なく描く

2019年11月22日

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ

© 2018 A24 DISTRIBUTION, LLC

【出演】エルシー・フィッシャー、ジョシュ・ハミルトン、エミリー・ロビンソン、ジェイク・ライアン
【脚本・監督】ボー・バーナム

作り物でない本当のリアリティを感じられる

 古代エジプトの象形文字から見つかったり、プラトンや清少納言の昔から「最近の若い者は」という言い回しがある。これは新しいものを受け入れようとしない、年長者の凝り固まった価値観の押し付けが、大昔から繰り返されていた事を物語っている。

 SNSによる新しいコミュニケーション手段の登場により、古い世代の「リアルな会話が絶対」だという信奉から、若い世代は新しい手法でも変わらぬコミュニケーションを取れる方法を、使いながら構築しつつある。

 最近日本でも、引きこもりで超美形のYouTuber“まふまふ”君が、ドームライブ即完売という熱狂的支持を受けているのを、私も遅ればせながら知った。

 本作は、グレード8(中学最終年)の時「学年で最も無口な子」というレッテルを貼られたが、SNSでは積極的に発信できるケイラ(エルシー・フィッシャー)を通じて、リアルなコミュニケーションが苦手な若者が、懸命にもがきながら成長していく姿を描いた、ヒリヒリするような等身大の青春映画である。

 学校の人気者の誕生会に招待されたケイラが、楽し気に談笑しながらくつろいでいる少女の仲間たちに対して、過呼吸になるほどのプレッシャーに苛まれながら勇気を振り絞って近づいていくシーンの切なさと疎外感は、リアルすぎて痛いほど分かる。同い年と関わるのが、実は最もハードルが高いのだ。

 高校の体験入学で目をかけてもらった素敵なお姉さんや、お節介でちょっとウザいけど、娘のことを肯定し続けるお父さん。内向的で自己否定しがちだったティーンエイジャーのケイラに対して最高の接し方であり、彼女の新しい一歩への大きな力となっている。

 自身もYouTuberだったボー・バーナム監督が、彼の10代の時の葛藤や苦悩を、決して背伸びする事なく、かっこつける事もなく、ありのままに描いている。だからこそ、作り物でない本当のリアリティを感じられるのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (7)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る