岐阜新聞 映画部

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シリアスで命がけの悩みと後ろめたさを、チャーミングに描いた心優しき映画

2019年11月03日

今さら言えない小さな秘密

© RAOUL TABURIN 2018 - PAN-EUROPEENNE - FRANCE 2 CINEMA - AUVERGNE-RHONE-ALPES CINEMA - BELLINI FILMS - LW PRODUCTION - VERSUS PRODUCTION - RTBF (TELEVISION BELGE) - VOO ET BE TV © PHOTOS KRIS DEWITTE

【出演】ブノワ・ポールヴールド、スザンヌ・クレマン、エドゥアール・ベール
【監督・脚本】ピエール・ゴドー

信頼のおける人に本当の自分を知ってもらえれば、あとはカッコつけておいていい

 世界最高峰のサイクルロードレース「ツール・ド・フランス」や、オリンピックの自転車競技で世界最多の41個の金メダルを誇る自転車大国フランス。本作は、そんな国の何でも修理してくれる自転車屋、実は自転車に乗れない修理工ラウル・タビュラン(ブノワ・ポールヴールド)の、シリアスで命がけの悩みと後ろめたさを、エスプリの効いた演出でチャーミングに描いた心優しき映画である。

 人間誰でも秘密の1つや2つはあるだろう。普段は心の中にしまっておくが、ラウルの秘密はちょっと厄介だ。郵便配達人のお父さんの後を継ぐにも言えないし、友だちの誘いにも乗れないし、ごまかしごまかしの人生だ。そんなある日、ついに絶体絶命のピンチがやってくる。学校行事のサイクリングの日、覚悟を決めて坂道を駆け降りるラウルに待っていたのは、まさかの…。

 舞台になった南フランス・プロヴァンス地方の風光明媚な街並みや野や池に、色とりどりの自転車が、リズミカルなベルの音色と共に登場する。村の伝説になったラウルに与えられたスポーツサイクルは乗ってもらえることなく、ただ手で押されるのみ。そんな主人を愛おしそうに無人の自転車が追っていく。フランス映画っぽいポエムでファンタジーなシーンは、微苦笑を誘われ抱きしめたくなってくる。

 幼馴染のマドレーヌ(スザンヌ・クレマン)と秘密を隠したまま結婚し、子どももできたラウルは村で平穏に暮らしていたが、パリから肖像写真家のエルヴェ・フィグーニュ(エドゥアール・ベール)がやってきた事により、人生最大の危機がやってくる。さて結末は如何に?というのが見所だが、この映画、終始笑顔に包まれて何だか幸せな気分になれるのだ。

 小さな秘密を信頼のおける必要最小限な人にだけ打ち明ける。詰まった息を吐いて本当の自分を分かってもらう。後はカッコつけておいていいのだと、生きる術を教えてくれる映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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