岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

多彩なキャラクターで展開する政界喜劇

2019年10月26日

記憶にございません!

©2019フジテレビ 東宝

【出演】中井貴一、ディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、小池栄子、斉藤由貴、木村佳乃、吉田羊、山口崇、田中圭、梶原善、寺島進、藤本隆宏、迫田孝也、ROLLY、後藤淳平(ジャルジャル)、宮澤エマ、濱田龍臣、有働由美子
【脚本と監督】三谷幸喜

過剰サービスは胃もたれに注意!楽しむ秘訣は無=記憶喪失?

 ベッドの上で目覚める男。すぐには自分の置かれた立場が分からないが、頭に巻かれた包帯や身体に繋がれている管の存在で、そこが病室であることを認識する。しかし、何故か男を動かすのは衝動的な逃走本能で、病室外にたむろする恰幅の良い男たちの隙をつき、病院の出入口に群がる群衆の目を盗んで脱出に成功する。パジャマ姿でおろおろと世間に立つ男に注がれるのは、好奇と蔑みの冷たい視線だった。

 「映画の導入は強引が良い」と言ったのは誰だったか?いきなりの疑問符の連打は、荒っぽい展開を予感させる。やり過ぎは禁物ではないか?

 三谷幸喜は”売れっ子“という形容がピッタリとはまる脚本家のひとりだろう。作家や主演俳優のキャリアを一時停止させてしまう、大河ドラマを12年周期で2回こなしている。その間にも、さすがに連ドラはなくなったものの、スペシャルドラマを多数手掛けている。映画は2、3年おきに脚本監督作品を発表しているし、原点でもある演劇においても、小劇場から歌舞伎まで、その活動は拡大進化している。

 映画、演劇にとどまることなく、さまざまな芸能芸術に精通している知識と教養は、脚本にも演出にも良く活かされ、時には作品の所々に強い関連性が見え隠れする瞬間がある。それは特にキャラクターの設定に色濃く現れるが、三谷流の味つけがなされるから、原型からは遠く離れて、オリジナリティが強調される。

 病院で目覚めた男は、時の総理大臣・黒田(中井貴一)だった。黒田は演説中に聴衆からの投石を受け、記憶喪失に陥っていた。

 史上最も嫌われた総理大臣は支持率2.3%だが、それを都合よく利用する取り巻きがいる。政界の泥泥とした欲望渦巻く世界が、多彩なキャラクターのもとに展開して行くが…残念ながら、爆笑喜劇とは遠く離れて、数回鼻から息が漏れた程度だったと告白しなければならない。キャラクターの過剰なデフォルメは映画には向かない、本筋の脚本で勝負すべきだと痛感する。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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