岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

普通とか常識とかからズレた家族のお話

2019年10月13日

おいしい家族

©2019「おいしい家族」製作委員会

【出演】松本穂香、板尾創路、浜野謙太、笠松将、モトーラ世理奈、三河悠冴、栁俊太郎
【監督・脚本】ふくだももこ

よそ者も国籍も性別も好き嫌いも関係ない愛の国はあるのか?

 銀座のデパートのコスメ売り場で働く橙花(松本穂香)はテンパっていた。仕事には行き詰まり、夫とは別居中。思い出のレストランでの久しぶりの会食も気まずいうえに、おもてなしの結婚記念日ケーキには、もう苦笑いするしかない。故郷の離島への帰省は、母の三回忌を兼ねた傷心旅行となるはずだった。

 船着場では弟の翠(笠松将)が派手なクラクションで出迎える。スリランカ人の妻イシャーニは臨月のお腹を抱えていた。実家に着くと、寛ぐ暇も無く、橙花の前には亡き母親のワンピースを着た父・清治(板尾創路)が仁王立ちしていた。

 ここまでのオープニングは、状況説明を省略しているほったらし感が先行して、内容の奇想天外さには距離が取れる分、違和感も幾分か薄まっている。

 みんなで囲む食卓には次の闖入者が現れる。女装した清治はお母さんになること、結婚することを宣言する。その相手は和生(浜野謙太)という見知らぬ男で、ダリア(モトーラ世理奈)という女子高生のコブ付きだった。

 全てに納得いかない橙花は島のスナックでヤケ酒をあおる。近づいてくるのは弟の友だち海老沢=エビオだが、下心丸出しの男をやり過ごす冷静さは、まだ持っていた。

 『おいしい家族』の登場人物は、少し常識からズレている。和生は島に流れ着いた訳ありのよそ者だが、清治をはじめとした島民たちが、すんなりと受け入れてくれたことに感謝している。娘のダリアは自由奔放で、同級生で不思議男子の時也(榊原徹士)の理解者でもある。清治は島の高校の校長の立場を女装したままで乗り切る。橙花が感じる部外者感は、島民の全てがそのズレを許容していることなのだが…。

 性別もよそ者も国籍も関係なしに、好きなものを好きと言える世界を不思議な家族に託して描いたメッセージは明確だが、米を餡子で包んだ"おはぎ"をどうしても許せない者は、孤立を感じてしまうかもしれない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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