岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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美しい風景の中で、極限に挑戦する人間を描いた稀有の傑作

2019年09月22日

フリーソロ

© 2018 National Geographic Partners, LLC. All rights reserved.

【出演】アレックス・オノルド、トミー・コールドウェル、ジミー・チン、サンニ・マッカンドレス
【監督】エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ/ジミー・チン

次の成功のためには中止する決断ができる、プロ中のプロ

 命知らずの挑戦というと、ワールドトレードセンター間を綱渡りで渡ったフィリップ・プティ(『ザ・ウォーク』として映画化)や、成層圏からのスカイダイビングを成功させたフェリックス・バウムガートナーなどが有名だが、975mの断崖絶壁エル・キャピタンを素手と足だけで登攀したアレックス・オノルドに密着した本作は、その奇跡の瞬間をリアルタイムで捉え切り、目撃者として歴史の証人となったことを追体験できる、股間が縮み上がるドキュメンタリーである。

 オノルドは、「なぜフリーソロをするのか?」と問われ「死を身近に感じることで、生を実感できる」と答える。一瞬のミスが死に繋がるという、恐怖に打ち克つ強靭な心と肉体の持ち主だからこそ言える言葉である。それは、試合を前にしたアスリートたちが、強烈なプレッシャーの中、いかにベストパフォーマンスを発揮するかということと同じだ。

 恐怖に打ち克つには、裏付けのない精神力でとにかく頑張ればいいというものではない。1年以上の期間をかけ、ロープや安全装置を使って実際のルートを登り、つかむ岩や突起物の位置や形状・特徴を入念に調査・確認をし、正確な地図を作っていく。納得できるまで何度も繰り返し登り、頭の中で何度もシミュレーションして叩き込み、失敗した時のことまで考えておく。

 これだけ用意周到に準備しておいても、彼は最初の挑戦の途中で登攀を断念する。次の成功のためには、中止する決断ができる。プロ中のプロである。

 この映画が素晴らしいのは、撮影チームもクライミングのプロであり、当事者であることだ。被写体と撮影者というのではなく、チームの一員なのである。オノルドの挑戦に対し、撮影すること自体が彼にプレッシャーを与えているのではないか、もしかしたら滑落シーンを撮影することになるのではないかと苦悩する姿が何度も出てくる。

 美しい風景の中で、極限に挑戦する人間を描いた稀有の傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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