岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

知恵が人々を救う感動の実話

2019年09月14日

風をつかまえた少年

© 2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC

【出演】マックスウェル・シンバ、アイサ・マイガ、リリー・バンダ、フィルベール・ファラケザ、レモハン・ツィパ、ノーマ・ドゥメズウェニ
【監督・脚本・出演】キウェテル・イジョフォー

援助のあり方を見つめ直す機会

 映画の舞台となるマラウイ共和国は、アフリカ大陸の南東部の内陸部に位置する。タンザニア、モザンビーク、ザンビアと国境を接し、国土面積は日本の3分の1ほどで、人口は1900万くらい。多民族国家だが、人口の75%がキリスト教信者で、公用語はチェワ語(国語)と英語。映画の中での会話もほぼ英語が使われている。イギリスの植民地支配を経て、独立したのは1964年のこと。恥ずかしながら、マラウイという国のことは全く知らなかった。

 14歳になったウィリアム(マックスウェル・シンバ)は進学を控えていた。家の経済状態はそれを許さないほどに困窮していたが、両親は学校の制服を用意して、ウィリアムを送り出す決断をする。

 村人の集会では、タバコ栽培の企業から土地の買収話が提案される。ウィリアムの父(キウェテル・イジョフォー)はそれに強く反対するが、身内の中にも土地を手離す者が現れ、村の団結力も危ういものとなる。そこに干ばつという厄災が襲いかかる。

 予定していた収穫はなく、学費は払うことができず、ウィリアムは退学となってしまう。家の畑仕事を手伝う中、井戸からバケツ一杯の水を組み上げる苦労に直面した時、ウィリアムの頭にあるアイデアが閃く。

 困窮する村には政府の援助物資が届けられるが、それはその場しのぎの空手形で、人々の不満は暴動にまで発展する。ニュースなどでは、アフリカ諸国の政治的紛争に、民族問題が絡んでいるという話はよく耳にする。村長が暴力に倒れる血なまぐさいシーンもあるが、映画は政治的に深入りすることなく、目線は少年のそれにすぐに戻る。ウィリアムは図書館の本と自らの知恵で、風車による発電機を作り、干上がった土地に恵みの水を導く。

 原作は実在の少年ウィリアムが書いたノンフィクションがもとになっている。監督は父親を演じたキウェテル・イジョフォー。彼はアカデミー作品賞受賞の『それでも夜は明ける』で、解放のため闘う黒人奴隷を演じた。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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