岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

人を信ずる事、想像する力を肯定し、それが原動力になる

2019年09月03日

クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅

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【出演】ダヌーシュ、ベレニス・ベジョ、エリン・モリアーティ、バーカッド・アブディ、ジェラール・ジュニョ
【監督】ケン・スコット

アジャの行為を見ていると、人生で大切な事が分かってくる。

 「亀の甲より年の劫」という諺がある。年長者の経験は、貴重で尊重すべきという事であるが、多分に尾ひれはひれのついた武勇伝かホラ話である事が多い。それでも「すべらない話」のように真実を面白おかしく語るのはひとつの芸であり、場合によっては人の人生を変えるきっかけになるかもしれない。

 本作は主人公である教師のアジャ(ダヌーシュ)が、少年院に送られる13歳前後の3人の少年に、自分の過去を語り聞かせるという形をとっている。しかし、彼が登場しないシーンも描かれており、嘘か真か、信じるか信じないかは貴方次第というお話だ。

 アジャは自分の境遇が貧乏だと気づいてからは、スリやかっぱらいと共に、空中浮遊やマジックショーをやるストリートパフォーマーとしてお金を稼いでいた。理由は、パリに住んでいるという実の父に会いに行くための費用を貯めるためだ。まあ境遇は事実だと思うが、父がフランス人だということからして、話を盛っているのかもしれない。

 映画は、タンスや衣装ケースに入ったり、気球に乗ったりして、パリからロンドン、スペイン、ローマ、リビア、再びパリと冒険譚が続いていくが、何故か女性にモテまくる。このモテるというのは肝心なところで、少年たちの耳目を集めるには必然なのだ。

 愉快で寓話的なエピソードは、アジャの語りでピックアップされ、スピーディに展開していく。貧困や移民難民など現代の社会問題も背景に出てくるが、決して難しくなく13歳の少年に伝わるように作ってある。

 山場はアジャが悪い奴を騙して得た不労所得を、リビアにいる難民たちに分配していき夢を与えるという人情噺の部分。アジャの行為で多くの人が助かり感謝される。人生で大切な事が分かってくるのだ。

 この映画を観ていると、人を信ずる事と共に、想像する力を肯定し、それが原動力になってものごとを動かしていくのだという事がよく分かる。人を好きになる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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