岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

期待を裏切らない結末が安心感を与えてくれる

2019年08月27日

今日も嫌がらせ弁当

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

【出演】篠原涼子、芳根京子、松井玲奈、佐藤寛太、佐藤隆太
【監督・脚本】塚本連平

シングルファザーのキャラ弁との見事な対比

 自分も高校生の頃は反抗期だったので覚悟はしていたが、娘や息子の笑い声がする茶の間に私が入っていくと、話はピタッと止まり各自の部屋に入っていくとか、修学旅行のお土産がお父さんだけ家族共用分の割り当てだったりとか、なんだか寂しい時期があった。

 今は2人とも就職して1人暮らしをしており、タマに実家に帰ってきた時は、iPadの相談に乗ってくれたり、野球の話をしたりするが、お父さんに対する会話の時間の割り当てはお母さんに比べるとうんと少ない。私も嫌がらせ弁当を作ればよかったと思わせたのが本作である。

 八丈島に住むシングルマザーのかおり(篠原涼子)が、ほんんど会話が成立しない娘の双葉(芳根京子)に対し、高校時代の3年間キャラ弁を作り続けるという話で、期待を裏切らない予定調和の結末が観客に安心感を与えてくれる。

 寝る間も惜しんで仕事をしながらも、泣き言ひとつ言わないお母さん。無視を決め込む娘に対し、キャラ弁は大事なコミュニケーションの手段となってくる。疲れているであろうに毎朝早起きして栄養バランスとキャラやメッセージを考えて娘に弁当を作る。この惜しみない無償の愛は泣かせどころであるが、それもこれも双葉が意地でも完食しているという事実が大きい。次第にクラスメートや先生まで、その完成度を期待するようになってくる。ウザイけど満更でもない複雑な心境が伝わってくるのだ。

 可哀想なのは東京のブログ読者でシングルファザーの岡野(佐藤隆太)だ。幼稚園児の息子・健太郎のために見よう見まねで一生懸命キャラ弁を作るが、実は息子は食べずに捨てていたのだ。この違いは何なんだ?

 おそらく双葉は、少し押し付け的な母の愛情を上手くかわしつつ受け止める事ができたが、健太郎は表面だけを真似した一方的な父の愛情に対し、恥ずかしいという気持ちが勝ったのであろう。見事な対比で、私は鳥肌が立ってしまった。身につまされる映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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