岐阜新聞 映画部

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フランス映画界の巨匠が手掛けた異色の西部劇

2019年08月26日

ゴールデン・リバー

©2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.

【出演】ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッド
【監督】ジャック・オーディアール

ラストは余韻を残した素敵な終わり方

 西部劇をおさらいすると、西部開拓時代にフロンティアスピリットを持った開拓者たちが、襲い掛かる邪魔者と闘いながら逞しく生きていく物語で、その多くにアクションが伴うというのが王道だ。

 フランス映画界の巨匠ジャック・オーディアール監督が手掛けた本作は、ゴールドラッシュに群がる有象無象の人間たちの欲望の中で、荒くれものの兄弟が暴力の連鎖から解放される僅かな希望を描いた、現代的で示唆に富む異色の西部劇だ。

 主役は4人の男たち。シスターズ兄弟という人を食ったような名前の殺し屋コンビ、凄腕ガンマンで信頼厚き兄イーライ(ジョン・C・ライリー)と、酔っ払いで人を殺すのに躊躇ない弟チャーリー(ホアキン・フェニックス)。兄は引退して普通の暮らしをしたいと思っているが、暴力的で欲にかられた弟のヤラカシに対していつも後始末をしている。

 この兄弟が始末を命じられた、金を見分ける“予言者の薬”を作る化学式を発見したウォーム(リズ・アーメッド)と、彼を監視する連絡係のモリス(ジェイク・ギレンホール)。

 前半は、シスターズ兄弟がウォームを追いかけていく道中を、4人の人となりに迫りながら、アクションシーン満載で丹念に描いており「追跡もの」として大変よくできている。

 後半4人が合流してからの緊迫したつばぜり合いは、一段と面白くなってくる。実際に薬を作り金の採集を試みる。金の使い道で、ウォームは「野蛮な世界を終わらせ、理想郷を作る計画」を話し、モリスは亡き父の遺産もつぎ込んでこの夢に協力しようとする。ウォームは、19世紀後半にヨーロッパからアメリカにやってきたユートピア的社会主義者のようだ。シスターズ兄弟は、殺し屋引退後の資金にする兄と、のし上がるために使う弟。一攫千金の夢はそれぞれである。

 ラストは、そういったギラギラした世界から一線を画すかの如く、母の胸に抱かれる。余韻を残した素敵な終わり方である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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