岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

フランスの才人監督による西部劇

2019年08月26日

ゴールデン・リバー

©2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.

【出演】ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッド
【監督】ジャック・オーディアール

オフビートなコメディセンスを見出せるか

 ジャック・オーディアールは現代のフランス映画界においてステファヌ・ブリゼと並んで最も注目すべき才人監督。近年『ディーパンの闘い』(15)や『預言者』(09)など秀作を連発しており、初の西部劇と聞いて期待は高まった。

 この映画、原題は「The Sisters Brothers」と言い、直訳すれば「シスターズ兄弟」で、姉妹は出てこない。シスターズというのが主人公の兄弟の姓で人を食った題名なのだが、劇中この姓名への言及は全くない。観客は、題名からこの映画は一種のオフビートなコメディなのか、と気づかねばならない。西部の荒くれ男が数多く登場するが、どこか今日の常識やふるまいからはズレている。人物たちが織り成すドラマは、シリアスであると同時に笑いも誘う。

 オーディアールの初の英語による本作は、西部劇でありながら、ロケーションはルーマニアやスペイン。アクションシーンも最小限に抑えられている。焚火を囲んで夜の帳の中、主人公の兄弟らが延々と語り合うシーンが続くので、普通の観客は退屈してしまうかもしれない。しかし、このテンポこそオーディアールがやりたかったことで、監督はあくまで登場人物たちが織り成すアンサンブルに主眼を置いている。

 提督(アドミラル)と呼ばれるボスは誰なのか、この兄弟の属する集団は何なのか、黄金を作るという化学式は存在するのか、色々と細部に疑問は湧くが、そうしたことにとらわれてはいけない。海外の映画サイトによれば、欧州では興行的には惨敗だった模様。一般受けはしないかも知れないが、才人監督が現代において西部劇を撮るとどうなるか、素晴らしいお手本となるべき一本だ。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

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