岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

今までのキャリアを重ね合わせるような役を、楽し気に飄々と演じる

2019年08月18日

さらば愛しきアウトロー

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

【出演】ロバート・レッドフォード、ケイシー・アフレック、ダニー・グローヴァー、チカ・サンプター、トム・ウェイツ、シシー・スペイセク
【監督・脚本】デヴィッド・ロウリー

俳優引退の撤回、これだけはついてもいい嘘

 本来の意味でのアウトローは、法を無視し社会秩序からはみ出したいわゆる無法者の事であるが、映画の世界では何故かカッコよく描かれたり憧れの存在である事が多い。かくいう私も、アウトローと聞くと憧憬の念を抱いたりする。

 本作の主演であるロバート・レッドフォードは、自身が一番好きだと言っている『明日に向って撃て!』で、早撃ち名人だけど泳げない銀行強盗のサンダンス・キッドというアウトローを演じて一躍スターダムに躍り出た。そして本作では、高齢で紳士的な銀行強盗フォレスト・タッカーを意気盛んに演じている。

 レッドフォードと同じように俳優としても監督としても超一流であるイーストウッドも、『運び屋』で麻薬を運ぶ運転手を演じたが、2人とも80歳を超えて俳優生活最後となるかもしれない作品で、今までのキャリアを重ね合わせるような犯罪者の役を、楽し気に飄々と演じている。とても偶然とは思えない。私の映画ファン創成期からのスターだった2人が、出世作で演じたジョー(『荒野の用心棒』)やサンダンス・キッドが年をとり「まだまだ悪さやってます」というふうな感じで、実にカッコいいのである。

 『さらば愛しきアウトロー』でタッカーが銀行強盗をする際には、帽子に付け髭、スーツにネクタイとダンディに極める。空っぽの銃をチラッと見せ、紳士的な会話でビジネスライクにお金を貰う。銃社会のアメリカで、一度も発砲せず誰一人傷付けないで銀行強盗を行う。

 凶悪犯罪である銀行強盗犯にも関わらず、その仕事は微笑ましく、うまく逃げおおせて欲しいと思わせる。凶悪犯に共感するなんて実社会ではありえないが、そこが映画のいいところ。人間が合わせ持つ天使に対する悪魔の部分、心の幅の部分で、応援したくなるのだ。

 レッドフォードの集大成のような映画。これにて俳優人生は終わりだとの触れ込みだが、しれっと撤回する予感がする。これだけはついてもいい嘘である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (10)
  • 検討する (0)

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

ページトップへ戻る