岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

欲望のための嘘は犯罪へと堕ちていく

2019年08月17日

エリカ38

©吉本興業

【出演】浅田美代子、平岳大、窪塚俊介、山崎一、山崎静代、小籔千豊、WORAPHOP KLAISANG、菜葉菜、鈴木美羽、佐伯日菜子、真瀬樹里、中村有志、黒田アーサー、岡本富士太、小松政夫、古谷一行、木内みどり、樹木希林
【監督・脚本】日比遊一

樹木希林最初で最後の企画映画 浅田美代子との絆の結晶

 詐欺というのは無くならない犯罪だと、繰り返される被害報道のたびに思う。加害者に再犯が多いのは、甘い汁を吸ったことが、忘れられないほどのものだったからだろうか?誘惑に負けるというのは麻薬に溺れる行為にも見える。映画の終盤、被害者たちが主犯的な役目を担った聡子=エリカ(浅田美代子)に詰め寄るシーンがある。血相を変えて、口角泡を飛ばす勢いで、責任を追及し被害弁償を求める被害者たち。彼らもまた甘美なおこぼれにあずかろうとしたことをこの時は忘れている。いや、後悔に掻き消されて被害者という鎧をまとってしまったのだから、冷静な判断はできようもない。

 映画のモデルとなった実際の事件は、2017年に国際指名手配となり、滞在先のタイで逮捕された山辺節子による投資詐欺事件で、記憶に新しい。巧みな弁舌で投資を促し、その支払いのためにネズミ講のように投資先を募っていくという、自転車操業型の典型的な手法で、新しさも独創性もなく、被害者は高い利息に目が眩んだに過ぎない。

 映画では投資の先に”支援”という冠がつき、単なる儲け話の毒を隠す。エリカにすり寄ってくる謎の女(木内みどり)がいる。彼女は要領の良い集金のためには、説得力のある存在がいるとアドバイスし、平澤(平岳人)を紹介する。平澤の弁舌とカリスマ性はたちまち効果を発揮し、ふたりは男女の関係になる。

 構成はルポライターの橋本(窪塚俊介)が被害者を訪ね、エリカの人となりを解明するというものだが、これがいささか中途半端。老母(樹木希林)を切り口に、幼少期の回想に転じ、父親を殺鼠剤で毒殺しようとする思春期。平澤の裏切り。金持ちの老人と結婚する後妻業。タイで若い愛人に溺れる生活。それぞれのエピソードには、エリカの人間性をあぶり出す凄みがあるのに、時系列のつなぎも上手くない。盟友・浅田の代表作を企画した、故・樹木希林の眼力は確かなものだっただけに、少し残念な気がする。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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