岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ろくでなしの狂気と再起

2019年08月16日

凪待ち

©2018「凪待ち」FILM PARTNERS

【出演】香取慎吾、恒松祐里、西田尚美、吉澤健、音尾琢真、リリー・フランキー
【監督】白石和彌

醜態をあえて晒す脱アイドル香取慎吾の覚悟

 引越しの風景。てきぱきと動くのは亜弓(西田尚美)で、高校生の娘・美波(恒松祐里)を差配する。そんな時、ひとり浮かない表情の木野本郁男(香取慎吾)がいる。そこには諦めに似た断念の様子がうかがえる。そんな3人の関係性が、少ない情報の中からも読み取れる。亜弓の故郷・東北を目指す旅立ち。そこには心悲しい都落ちの雰囲気が色濃くただよう漂う。

 転地である宮城・石巻は亜弓のかつての生活圏であり、人間関係のしがらみも見え隠れする。老いた漁師の父(吉澤健)は無口でぶっきら棒だが、娘の帰還を受け止める気概がうかがえる。

 近所に住む小野寺(リリー・フランキー)は世話好きの性分で、亜弓たちを温かく迎えようとする。亜弓の前夫であり、美波の実父でもある村上(音尾琢真)は、亜弓との確執からか、郁男に対しても斜に構えて、娘との関係を血の繋がりを盾に誇示する。

 印刷工として腕に覚えのある郁男は、亜弓の用意した印刷会社に就職して、新しい居場所を見つけようとしていたが、ある日、同僚たちの会話に競輪の話題を耳にする。石巻には競輪場はないが、賭けの“ノミ”をする場所があることを知らされる。郁男の転落人生の要因は競輪であり、亜弓からも釘を刺されているはずだったが、郁男の決心も誘惑のもとには呆気なく崩れ去る。ノミ屋のモニターから聞こえる鐘=ジャンの音は、郁男の身体中に流れる悪魔を覚醒させる。

 脚本はベテラン加藤正人のオリジナルで、登場人物の人間性の光と影をきめ細かく描いている。特に、郁男が博打へとのめり込んでいく過程は執拗で、白石和彌監督の凄みのある演出の持ち味と相まって、転落して行く男のどうしようもない性を描き切ることに成功している。ただ、物語の根本的な批判になってしまうが、亜弓の殺害という展開には疑問がある。また、香取慎吾は無精髭とむくんだ顔を晒して、脱アイドルの意気込みを感じさせる力演だが、彼の明るさが好みである分、ちょっとモヤモヤした気分になり辛い。いずれも、個人的な好き嫌いを優先させた意見に過ぎないが…。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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