岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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そこには“継続戦争”という長い戦いがあった

2019年08月09日

アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場

© ELOKUVAOSAKEYHTIÖSUOMI 2017

【出演】エーロ・アホ、ヨハンネス・ホロパイネン、アク・ヒルヴィニエミ、ハンネス・スオミ
【監督・脚本】アク・ロウヒミエス

血なまぐさい戦場と美しき平穏な日常の見事な対比

 ヨーロッパにおける第二次世界大戦は、1939年9月、ドイツのポーランド侵攻にはじまる。フィンランドの国土は東側を広くソ連と国境を接し、首都ヘルシンキのある南側のフィンランド湾はバルト海につながり、西方にはドイツがある。その地理的な条件から、戦争中は他国、他民族の利害が絡んだ戦いの場となった。

 39年から40年にかけて、ソ連によるフィンランドへの侵攻で“冬戦争”が戦われ、フィンランドは領土を奪われた。41年にはドイツによるソ連侵攻に呼応する形で、フィンランドは奪われた領土奪還のため、ソ連との戦いに突入する。これを“冬戦争”を継続する戦いであることから“継続戦争”と呼んだ。

 『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』はヴァイニョ・リンナの小説「無名戦士」を原作にしている。フィンランドでは知らない人はいないと言われる古典小説の名作という位置づけで、祖国防衛と国土回復のための“継続戦争”で、ソ連軍と戦った兵士たちを描いている。

 ロッカ(エーロ・アホ)は家族と農業を営んでいたが、冬戦争で土地を奪われた。その土地を取り戻すため、この戦争に参加する。配属された機関銃中隊には、気心の知れた友人のスシがいた。また、婚約者をヘルシンキに残したまま前線に来た小隊長のカリルオト(ヨハンネス・ホロパイネン)や、実戦能力に長けた小隊長のコスケラ(ジュシ・ヴァタネン)、戦場でも純真さを失わないヒエタネン(アク・ヒルヴィニエミ)がいた。

 長い戦いの状況は地図で示される。国境は戦いの度に変遷を繰り返す。壮絶を極めるその戦いはリアルに容赦なく描かれる。しかし、その目線はあくまでも一兵士のもので、戦況の進展によって変わる隊の確執や変化も見逃さない。兵士には休暇がある。故郷に帰って婚約者と結婚式を挙げたり、収穫を手伝う日常に当たり前のように戻ったりする…が、それは完全な安息ではないことに戦慄する。ぼーっと生きてる日本人には分からない、ヨーロッパ戦線の歴史を知る傑作である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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