岐阜新聞 映画部

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フィンランドの無名戦士を敬意をもって描く

2019年08月09日

アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場

© ELOKUVAOSAKEYHTIÖSUOMI 2017

【出演】エーロ・アホ、ヨハンネス・ホロパイネン、アク・ヒルヴィニエミ、ハンネス・スオミ
【監督・脚本】アク・ロウヒミエス

優しきサンタクロースとムーミンの国は、実は骨太なのである

 スウェーデンとロシアに挟まれた人口約550万人の小国フィンランドは、1917年のロシア革命により誕生したソヴィエト政権によりロシアからの独立を承認された。その後、革命派と反革命派の激しい対立やソ連の脅威は常にあったものの、暫く独立は保たれていた。

 しかし1939年、第二次大戦に乗じてソ連がフィンランドに進攻(冬戦争)。粘り強く抵抗したものの、領土の一部が不当に奪われる事となる。やむなくナチスドイツに接近して協力を仰ぎ、領土回復のためにソ連と再度戦うこととなる。したがってフィンランドは、連合国にとっては日本やドイツと同じ、数少ない枢軸国となってしまう。この“継続戦争”と言われる民族自決のための戦闘を描いたのが本作である。

 第二次大戦を描いた戦争映画は、戦争そのものの悲惨さや理不尽さを描くか、日本やドイツを「悪役」とし、アメリカやイギリスなどを「正義」とした勧善懲悪の映画が一般的であるが、フィンランドに関しては実に複雑な事情があり、〇か×かではないのである。

 相手のソ連軍が、ナポレオンやヒトラーを破った「冬将軍」という季節を武器に闘ってきたのと同じように、フィンランド軍は圧倒的な不利の中、「マツ、トウヒ、白樺」の森林を縦横無尽に活用し、ソ連軍を苦しめていく。

 それらの様子をCGに頼ることなく実際に火薬を使った撮影で、あたかも戦場にいるような臨場感を観客に与える。さらには、家に帰れば善き夫であり優しい父であったりする市井の人々=無名戦士(アンノウン・ソルジャー)たちが、祖国のため、いやそれ以上に家族のために闘う姿を敬意をもって描いている。

 枢軸国であり、ソ連の隣接国家であるにも関わらず、フィンランドはソ連に占領されることもなく社会主義国にもならなかった。このフィンランド国民映画は、その事を高らかに誇らしげに描いている。優しきサンタクロースとムーミンの国は、実は骨太なのである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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