岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品家族にサルーテ!イスキア島は大騒動 B! 微妙なバランスを保っていた一族の化けの皮が、みるみる剥がれていく 2019年08月04日 家族にサルーテ!イスキア島は大騒動 ©2018 Lotus Production e 3 Marys Entertainment 【出演】ステファノ・アコルシ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ステファニア・サンドレッリ、イヴァノ・マレスコッティ、クラウディア・ジェリーニ、ヴァレリア・ソラリーノ、サンドラ・ミーロ 【監督・脚本】ガブリエーレ・ムッチーノ 建前と本音を笑いをもって表出しており、シニカルで実に面白い 家族とは血縁関係を中心とした基礎的な集団であり、その関係性を描いていくのは映画の普遍的なテーマであるが、国や人種が違えばその捉え方や表現の仕方も当然違ってくる。 陽気で楽観的で細かい事は気にしないが、お喋りで自分勝手なイメージのあるイタリア人大家族を描いた本作は、離れて暮らしていたり、あえて触れずにおくことで、微妙なバランスを保っていたピエトロ(ステファノ・アコルシ)一族の化けの皮が、みるみる剥がれていくお話だ。風光明媚なイスキア島に3日間取り残された事で起こる一族19人の不平や不満・本音の爆発は、イタリア人らしくみんな大声で自己主張をぶつけあい騒々しい事この上ない。 夫の不倫に悩まされながらも、ブッダの教えで辛うじて心の平静を保っている長女のサラ。彼女は仲のいい夫婦を演ずるのに一所懸命だ。言葉巧みに女性を口説くイタリア人男性の典型のような長男カルロ。彼が前妻と現在の妻と同等に接しているので、女性同士の嫉妬は激しさを増していく。小説家で成功した今は独り身の次男パオロも、ひと時の恋ばかり追い求め心は満たされない。 ピエトロの甥のサンドロはアルツハイマー。妻のベアトリーチェは介護に疲れ果てている。サンドロの兄弟のリッカルドは、どうやら一族の厄介者。奥さんが妊娠しているのに無職で借金まみれだが、助けを求めても誰も相手にしてくれない。 今まで取り繕っていたものが雪崩を打つように崩壊していく様は、人間の建前と本音を笑いをもって表出しており、シニカルで実に面白い。深刻な話なのにコメディとして成り立っているのはイタリア人の特質によるところもあるが、人生はことが起こっている最中は大変でも、あとから見ると滑稽だったなんて事の連続だとムッチーノ監督が描いているからだ。 原題は「A casa tutti bene (家ではみんな良い感じ)」。その通り、いい感じの映画である。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (11)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター 4Kで甦る 憎悪の泥に塗れた官能的な愛の物語 2024年04月24日 / ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター ジェーン・カンピオン監督の最高傑作、完璧な作品 2024年04月24日 / RED SHOES/レッド・シューズ オーストラリア発バレエ舞台の成長物語 more 2020年11月25日 / 出町座(京都府) 商店街にある映画と本とカフェを愉しむ映画館 2022年12月28日 / シネマエポック(鳥取県) 白壁土蔵の城下町にある街なか映画館。 2021年08月11日 / 【思い出の映画館】上野セントラル(東京都) 下町のターミナル駅にあった人情味溢れる松竹封切館 more
建前と本音を笑いをもって表出しており、シニカルで実に面白い
家族とは血縁関係を中心とした基礎的な集団であり、その関係性を描いていくのは映画の普遍的なテーマであるが、国や人種が違えばその捉え方や表現の仕方も当然違ってくる。
陽気で楽観的で細かい事は気にしないが、お喋りで自分勝手なイメージのあるイタリア人大家族を描いた本作は、離れて暮らしていたり、あえて触れずにおくことで、微妙なバランスを保っていたピエトロ(ステファノ・アコルシ)一族の化けの皮が、みるみる剥がれていくお話だ。風光明媚なイスキア島に3日間取り残された事で起こる一族19人の不平や不満・本音の爆発は、イタリア人らしくみんな大声で自己主張をぶつけあい騒々しい事この上ない。
夫の不倫に悩まされながらも、ブッダの教えで辛うじて心の平静を保っている長女のサラ。彼女は仲のいい夫婦を演ずるのに一所懸命だ。言葉巧みに女性を口説くイタリア人男性の典型のような長男カルロ。彼が前妻と現在の妻と同等に接しているので、女性同士の嫉妬は激しさを増していく。小説家で成功した今は独り身の次男パオロも、ひと時の恋ばかり追い求め心は満たされない。
ピエトロの甥のサンドロはアルツハイマー。妻のベアトリーチェは介護に疲れ果てている。サンドロの兄弟のリッカルドは、どうやら一族の厄介者。奥さんが妊娠しているのに無職で借金まみれだが、助けを求めても誰も相手にしてくれない。
今まで取り繕っていたものが雪崩を打つように崩壊していく様は、人間の建前と本音を笑いをもって表出しており、シニカルで実に面白い。深刻な話なのにコメディとして成り立っているのはイタリア人の特質によるところもあるが、人生はことが起こっている最中は大変でも、あとから見ると滑稽だったなんて事の連続だとムッチーノ監督が描いているからだ。
原題は「A casa tutti bene (家ではみんな良い感じ)」。その通り、いい感じの映画である。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。