岐阜新聞 映画部

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「前作との比較」という避けて通れない道に挑戦してくれた

2019年08月02日

パピヨン

© 2017 Papillon Movie Finance LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】チャーリー・ハナム、ラミ・マレック、トミー・フラナガン、イヴ・ヒューソン
【監督】マイケル・ノアー

どんな状況に置かれても信頼できる相手を信ずること

 以前、雑誌のBRUTUSで「いまさら観てないとは言えない映画。」という特集があったが、私にとって『パピヨン』(1973年版)は、まさにそういう1本であった。何故か名画座にかかっても見逃してしまう。いまさらDVDで観る気もしない。そんなこんなで45年。デンマークの新鋭マイケル・ノアー監督が、「前作との比較」という避けて通れない訳知り顔の評価を恐れず果敢に挑戦してくれた本作は、水準以上のクオリティで私の「もしかして、つまらないかも」という事前の不安を打ち消し、いい意味で裏切ってくれた。

 まずは二大スター共演の部分。主人公パピヨンには肉体派チャーリー・ハナム。そして、偽国債犯のドガ役には今をときめくラミ・マレックと旬の役者を配している。チャーリー・ハナムの碌な食事も与えられず何年も独房に入れられてやせ衰えていくシーンは、絶望の淵をギリギリ保っていく鬼気迫る演技で圧倒的リアリティを表出している。

 それにも増して存在感があるのがドガ役のラミ・マレックだ。『ボヘミアン・ラプソディ』以前の撮影らしいが、知能犯で服役している事から分かるように頭も切れ、脱獄チームの事務局長という感じだ。当初は女性的な感じもしたが、パピヨンへ様々な協力や援助をしていくうちに、男性的な部分が多くなってくる。脱獄するボートの上での一件は、映画当初の彼では考えられない。これらをわざとらしくなく自然に演じているわけだが、すでにスターとしての片鱗が見えている。

 全体を観ての感じは、脱獄の部分より、男同士の友情や希望にウェートが割かれているように思う。これはホモセクシャルというような図式的なものでなく、過酷な状況の中での運命共同体として、それをどう突破していくかという、志を同じくする同志という結びつきである。

 私が何に感動したのかというと、どんな状況に置かれても信頼できる相手を信ずること、この部分である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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