岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

命がけの脱獄の先に自由の光は見えるか

2019年08月02日

パピヨン

© 2017 Papillon Movie Finance LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】チャーリー・ハナム、ラミ・マレック、トミー・フラナガン、イヴ・ヒューソン
【監督】マイケル・ノアー

絶望と死が支配する地獄島で生まれる友情

 原作はアンリ・シャリエールが69年に発表した同名の自伝小説で、広く翻訳されベストセラーとなった。最初の映画化はフランクリン・J・シャフナー監督、スティーブ・マックイーン、ダスティン・ホフマン主演で73年(日本公開74年)に公開されている。

 パリでのヤクザな世界で金庫破りをしていたパピヨン(チャーリー・ハナム)は、上前を隠していたことが仲間の幹部にばれて、見せしめのように罪を被せられ、終身刑の判決を受けてしまう。当時の重罪犯は、祖国フランスを追放され島流しとなった。まるで江戸時代のような話だが、これは1930年はじめ頃のことだというのが驚き。南米ギアナのデビルズ島での過酷な重労働は、パピヨンに脱獄という道を選択させる。

 地獄の沙汰も金次第。刑務所内での金の使い方が囁かれ、囚人のうち誰が金を隠し持っているかが噂される。パピヨンは偽札作りで収監されたドガ(ラミ・マレック)にすり寄る。

 警戒心の強いドガだったが、命さえ奪われかねない過酷な現実を見ることで、パピヨンの危機回避能力にすがる決断をする。そして、次第に2人の間には不思議な熱い友情が生まれる。

 脱獄の試みは繰り返し行われるが、執拗な追跡により連れ戻され、その後に待っているのは、より過酷な条件の独房での生活だった。パピヨンはドガの配慮により、貧相な食料にココナッツの実を紛れ込ませて、栄養補給により体力の維持を図るのだが、それも見つかることになる。ついには、陽の光さえ届かない独房に入れられてしまう。さすがのパピヨンの気力も折れかけるのだが、自由への微かな希望が命をつなぐ。

 脚本はハリウッドの異端児ダルトン・トランボが担当した最初の映画化時のものを踏襲しているが、独房での想像を絶するリアルで醜悪な描写は、幾分かあっさりとした印象で、いくつかのエピソードも薄められてはいる。しかし、トランボの反骨がパピヨンのそれに見事に投影された核心は損なわれていない。そして、前作の圧倒的なイメージに臆することなく健闘した、2人の主役にも拍手を贈りたい。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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