岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

知的好奇心を刺激する目からうろこの映画

2019年07月16日

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

© 2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved

【監督・録音・編集・製作】フレデリック・ワイズマン

製作側の意図を極力排除した「ダイレクトシネマ」で考え抜く醍醐味を

 岐阜CINEXにて岐阜新聞映画部第5回アートサロン『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』を観る。ドキュメンタリー映画の巨匠・御年89歳のフレデリック・ワイズマン監督の日本公開最新作で、3時間25分の大長編。ワイズマン監督作初体験である。

 映画は製作側の意図を極力排除した、撮影と同時に録音しナレーションを入れない「ダイレクトシネマ」という形式をとっているため、観客は映っている映像や喋っている内容からダイレクトに感じ取って理解していかなければならない。面白いか面白くないかという観点でなく、映画とがっぷり四つに組み、監督からの提示に対して真正面から考え抜く醍醐味を味わう、いわば格闘技のような映画である。

 私も図書館はよく利用するが、その目的は知的好奇心を満たしたり研究のための調査をするなど、もっぱら書籍や雑誌、資料などを借りたり閲覧するためである。ところが、ニューヨークの公共図書館は、図書の貸し出しや歴史的資料の収集はもちろん、就職セミナーに起業家支援、著名人の講演、コンサート、ネット端末の貸し出しなど、その守備範囲は驚くべき多彩さである。日本でいえば、ハローワークと公民館と文化会館などが全部一緒になっている感じなのだ。

 ずいぶん怪しくなってきてはいるが、アメリカは自由と民主主義の国である。図書館はそれを象徴する存在であって、いかなる人種であっても経済的な格差があっても、誰にでも平等に開かれている場所であり、「知りたい」「学びたい」という要求をサポートし、人を結びつけるためにあるのだ。そのために館長以下司書たちは徹底的に議論する。

 映画は膨大な情報を断片的に繋いでいくが、中でも「奴隷制」に関する様々なアプローチは特に興味深い。イスラム教との関連性が史実でなく都合よくねじ曲げられてきた経緯が見事に浮かび上がってくるのだ。

 知的好奇心を刺激する目からうろこの映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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