岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

自分自身の境遇をタブー化せず、愉快に笑いとばしていく爽快な映画

2019年06月21日

ドント・ウォーリー

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【出演】ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラック
【監督・脚本】ガス・ヴァン・サント

原題のアメリカンジョークを笑えるかどうかが鍵

 自身アルコール依存症で、飲酒運転の同乗事故により半身不随となった風刺漫画化ジョン・キャラハン(ホアキン・フェニックス)の半生を追った実話映画。原題は彼が描いた漫画のセリフ「Don't worry,he won't get far on foot(心配しないで、彼は歩けないから)」から取られており、身体障害に掛けたこのアメリカンジョークを笑えるかどうかが、本作を好きになれるかどうかの鍵となるであろう。

 世界保健機関(WHO)調べ(2010年)でアルコール依存症率が対人口比4.7%(世界12位)のアメリカは、それを解決したいと願う「AA(アルコホーリクス・アノニマス)」と呼ばれる断酒会(自助グループ)の活動が活発に行われている。

 本作の主人公ジョンは、幼い頃に母親に捨てられ養子に出されたというトラウマから逃れるため、過度な飲酒を繰り返し酒浸りの生活に陥っていく。酒場で知り合った男と意気投合し、泥酔状態で彼の車に乗ったあげく、激突事故で下半身不随となる。

 それでも飲酒をやめなかった彼が出会ったのが、アラノ・クラブというAA(自助グループ)だ。特に会のリーダーのドニー(ジョナ・ヒル)との関わりは、絶望の淵にあったジョンを自分自身と向き合わせ、前向きに生きていくきっかけとなっていく。

 ドニーは、アルコール依存に至ったジョンのトラウマを少しずつ解きほぐし、悲観的に捉えがちだった彼の認知の歪みを、バランスのとれた思考に導きだす手助けをする。心を開いたジョンは、今まで迷惑をかけてきたと思っている様々な人に謝罪をして許してもいく。心が解放されたジョンは、自分自身を許すのだ。

 ジョンが描く漫画は毒がある。それを笑っていいものかどうか、行間をちゃんと読まないとその面白さが分からない仕組みだ。彼は自分自身の境遇をタブー化せず、愉快に笑いとばしていく。憐れみや同情などクソくらえである。爽快な映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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