岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

依存症+四肢麻痺の風刺漫画家の生きざま

2019年06月21日

ドント・ウォーリー

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【出演】ホアキン・フェニックス、ジョナ・ヒル、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラック
【監督・脚本】ガス・ヴァン・サント

亡き盟友たちへ捧ぐガス・ヴァン・サント監督の鎮魂歌

 電動車椅子が猛スピードで走る。長めの赤毛を風になびかせて爽快そうに見える。表情からはうかがえないが、あるまじき速度には切迫した理由があるのか?操縦しているのは、ジョン・キャラハン(ホアキン・フェニックス)で、車椅子は道路の段差に引っかかって横転する。近くでスケボーをしていた少年たちが駆け寄ってくる。動けないキャラハンの瞳には何が見えるのか?

 酒浸りの毎日を送っていたキャラハンは、その日も悪友のデクスターとハメを外し、彼の運転する車で帰途についたが、途中、事故を起こし、次に気付いた時は病院のベッドの上だった。

 胸から下の麻痺は一生回復することがない。運命として受け入れるしかないが、その先に光は見えず絶望するしかない。それを救ったのは、セラピストのアヌー(ルーニー・マーラ)だった。リハビリセンターでの彼女との会話が、穏やかな日常に引き戻してくれる。車椅子に乗れる体力を手に入れて、少しばかりの自由を味わい、アパートでの暮らしも始めるが…キャラハンは再び、酒に逃げ場を求める。

 『ドント・ウォーリー』は四肢麻痺になった漫画家ジョン・キャラハンを描いた伝記映画だが、キャラハンは英雄とか尊敬される人物という範疇からはいささか遠い。アパート暮らしといっても、住み込みの介護人の助けは欠かせないのに我儘放題。役所の対応には悪態をつき、お行儀も良くない。

 それを劇変させるのがドニー(ジョナ・ヒル)が主催する禁酒会だった。自らも依存症の経験があるドニーの示唆に富んだ話は、キャラハンに自らと向き合う時を与える。

 キャラハンの描く風刺漫画は、彼の生きざまそのままに、たっぷりの皮肉が込められている。その隙間には母探しや和解への模索が見える。それは辛い痛々しさに満ちているが心にしみる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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