岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

理不尽な弾圧に対峙した美しき友情の物語

2019年06月14日

僕たちは希望という名の列車に乗った

©Studiocanal GmbH Julia Terjung

【出演】レオナルド・シャイヒャー、トム・グラメンツ、ヨナス・ダスラ―、ロナルト・ツェアフェルト、ブルクハルト・クラウスナー
【監督・脚本】ラース・クラウメ

ベルリンの壁ができる前の感動実話

 『僕たちは希望という名の列車に乗った』という題名には、甘くロマンチックな香りが漂う。しかし、原題は『The Silent Revolution』で、直訳すれば“沈黙の革命”あるいは“静かなる革命”となる。物語の引き金が“黙祷”であることから、その行為を指しているとも言える。

 時は東西冷戦下の1956年。東ドイツのスターリンシュタットの高校に通うテオとクルトは、列車で西ベルリンへ向かう。テオは労働者の子、クルトはエリート=市長の子と育った環境は違ったが、ふたりは固い友情で結ばれていた。列車内では身分改めが行われて緊張が走るが、祖父の墓参りという口実でかわす。そこには手慣れた様子がうかがえ、壁のなかった時代の国境越えの緩さが見える。この日はちょっと冒険して映画館に忍び込む。ニュース映画で映し出されたのは、自分たちと同じ、ソ連の影響下にあるハンガリーで起きている、自由化を求める市民の蜂起だった。

 町に戻ったテオとクルトは、数名の級友とともに同級生パウルのおじさんの家を訪ねる。そこでは西ドイツのラジオ放送を聞くことができた。禁断の放送ではハンガリーの民衆蜂起が悲惨な結末を招き、多数の犠牲者の中には、英雄的なサッカー選手ブスカシュが含まれていることを報じていた。教室ではハンガリーのために黙祷しようとというクルトの呼びかけに議論が衝突するが、多数決の上、2分間の黙祷が実行される。

 その後に起こる学校や学務局というわけの分からない役所の糾弾が陰湿で凄まじい。生徒間の友情を裂く密告の強要や、退学をちらつかせる権力の濫用など、次第に追い詰められていくのだが…。厳しい現実に立ち向かうひたむきさは美しく感動的だ。キラキラ青春映画を否定するわけではないが、こういう命がけの青春があったことを知ろう!きっと、あなたの胸を打つ!

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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