岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

病める宗教界、アメリカへの静かな警鐘

2019年06月10日

魂のゆくえ

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【出演】イーサン・ホーク、アマンダ・セイフライド、セドリック・カイルズ、ヴィクトリア・ヒル、フィリップ・エッティンガー
【監督・脚本】ポール・シュレイダー

ポール・シュレイダー監督が用意した“聖なる映画”へのオマージュ

 欧米の映画には宗教的な要素を含んだものが少なくない。それには主人公が聖職者だったりするものや、そこから話が神秘的なものへと昇華するものもある。一概には言えないが、儀式宗教が圧倒的に日常化している日本人にはハードルが高く、実感として味わうには難しい時がある。しかし、その多くに含まれる崇高なメッセージが、我々の心を揺さぶる瞬間があることも事実である。

 カメラはゆっくりと建物に近づく。華美な装飾のない外観だが、それが教会であることが分かる。ファースト・リフォームド教会はニューヨークにある小さな教会で、牧師を務めるトラー(イーサン・ホーク)は、自身の考えを年報に記載する記事を書こうとしているがうまくいかず、その苛立ちは隠しきれない。彼には戦死した息子ジョセフに対して強い自責の念があり、それは今も重い苦悩として心にのしかかっていた。

 そんな時、信者のメアリー(アマンダ・セイフライド)が、夫のことで相談を持ちかけてくる。メアリーの夫マイケルは、環境保護活動に深入りするあまり、極端な世界終末論にとらわれていた。しかし、そんなマイケルをトラーにも救うことはできず、マイケルは自ら命を絶つ。ここまでの展開がイングマール・ベルイマン監督の『冬の光』(75)と同じなのは明らかなリスペクトだが、強調されるのは聖職者としての無力さである。

 監督のポール・シュレイダーは、作品の中に他にもいくつかのオマージュを捧げている。そういう分析はいささかマニアックなので省くが、脚本家として参加した『タクシードライバー』(76、 マーティン・スコセッシ監督)を彷彿するシーンが登場し、重く静かな映画が豹変する瞬間があることには驚かされる。しかし、映画は病めるアメリカを憂い、あくまでも真摯なメッセージを用意している。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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