岐阜新聞 映画部

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バイス=“副”大統領のバイス=“悪徳”を描く政治映画

2019年06月08日

バイス

©2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

【出演】クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、スティーヴ・カレル、サム・ロックウェル、タイラー・ペリー
【監督・脚本・製作】アダム・マッケイ

民主大国のはずのアメリカの不思議な“陰”

 ディック・チェイニーは1941年、ネブラスカ州リンカーンに生まれた。父母は農務省に勤務しており、熱心なニューディーラー=中道左派でもあった。彼の進路も紆余曲折はあったものの、66年にはワイオミング大学で政治学の修士号を取得している。これもこの両親の影響が少なからずうかがえる。

 『バイス』ではそれ以前の1960年、電気工だった頃からはじまる。高圧線の工事に携わっていた時、ひとりの同僚が足場から転落する。運の悪い男に何を思ったか?その時、チェイニーは傍観者にすぎない。これを含めた若き日の描写は断片的で、飲酒による交通事故にあった時も、呆然とする表情はあっても、それはひとつの事実の提示にとどまる。

 チェイニーに対して大きな影響力を持っていたのは、高校時代からの恋人で妻となるリン。内助の功以上の野心が彼の背中を強く押した。

 ウィスコンシン大学の大学院生だった時、州知事選のスタッフとして参加したのが政界と接触した最初で、ニクソン政権下では次席法律顧問、フォード政権に移行後は最年少の34歳で大統領首席補佐官に就任する。

 ホワイトハウスに初めて個室の執務室を持ったチェイニーは、決して広くはない部屋でひとりくつろぐ。妻の野心が彼の野心へと燃え移った瞬間、その表情は若き日のそれとは明らかに違う。

 映画は記憶に新しいアメリカ合衆国の副大統領の伝記であるにも関わらず、大胆にもその悪人ぶりに焦点を当てている。脇を固めるラムズフェルド、子ブッシュ大統領、パウエルなど(政治的にはより表の人たち)も容赦なく描かれている。ナレーションにいたっては禁じ手の遊びまである。不謹慎にもすこぶる面白い政治映画を口を尖らせた大統領は観ただろうか?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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