岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

男のもとにやってくる悩める相談者たち

2019年06月05日

ザ・プレイス 運命の交差点

© 2017 Medusa Film SpA .

【出演】ヴァレリオ・マスタンドレア、マルコ・ジャリ―ニ、アルバ・ロルヴァケル、サブリーナ・フェリッリ
【監督・脚本】パオロ・ジェノヴェーゼ

悪魔の指図か 神の啓示か

 カフェ“ザ・プレイス”は、どこにでもある繁華街にある。客で賑わう店内の奥の席に男はいつも座っている。男のもとにはひっきりなしに訪ねてくる客がいる。その顔つきはどれも深刻で、男の前に座ると、注文もそこそこに切実な思いを男に語り出す。その多くは身の上に関するもので、アドバイスを受けるためにやって来たと推測できるのだが、その内容と言えば、際どいものも多く、これは一種の精神分析のようなカンセリングなのかとも思えてくる。

 男の前には分厚い本のような“ノート”がある。それは相談者のカルテのようなものなのか、その頁にはびっしりと書き込みがあるが、その内容が説明されることはない。相手の求めに対応するように、男はノートを括り、頁に挟んだメモを取り出したりする。神職者が聖書から言葉を探し求める行為にも見えるが、男の口から出るアドバイスは、かなり辛辣な無理難題のようなものばかりだ。

 『ザ・プレイス 運命の交差点』は、この題名と同名のカフェから一歩も外に出ることのないワンシュチュエーションドラマで、観客は想像力を働かせることを要求させられる。相談者である登場人物の情報は限定的であるにも関わらず、いくつかの人物には連鎖があることが分かってくる。

 息子の素行に悩む刑事。神の不在に直面する修道女。視力を取り戻したい盲目の男。アルツハイマーの夫を治したいと願う老婦人。ピンナップガールと関係を持ちたいと妄想する男…持ち込まれる悩みは様々で、その内容も切実なものもあるが、突拍子のない夢想もある。情報量の不足は時に、観客を置き去りにする。

 男は“ザ・プレイス”で食事もする。閉店後も居座り帰る様子も見えない。馴染みのウェイトレスとの会話も謎めいたまま。相関図のパズルがはまれば、自由な解釈へと誘ってくれるかも?…何とも不思議な映画だ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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