岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

自然破壊を阻止すべくたちあがった女

2019年05月25日

たちあがる女

©2018-Slot Machine-Gulldrengurinn-Solar Media Entertainment-Ukrainian State Film Agency-Köggull Filmworks-Vintage Pictures

【出演】ハルドラ・ゲイルハルズドッティル、ヨハン・シグルズアルソン、ヨルンドゥル・ラグナルソン、マルガリータ・ヒルスカ
【監督・脚本】ベネディクト・エルリングソン

爽快な寓話に仕立てた演出が素晴らしい!

 荒涼感漂う溶岩台地に林立する巨大な送電線の鉄塔の列の下、“ロピセーター”を着た女性が、果敢な戦士さながらの身のこなしでその送電線を切断する。彼女は“山女”のコードネームで知られる謎の環境活動家だが、町に戻れば、アマチュアの合唱隊の指導をする平凡な女性ハットラ(ハルドラ・ゲイルハルズドッティル)だった。

 舞台となるアイスランドは北極圏に隣接する島国で、ノルウエー、デンマークによる植民地支配を受け、独立を勝ち取ったという歴史的な背景から、自立と自給自足の精神がその国民性の根底にある。また、火山国としても知られ、地熱を利用した発電も広く活用されている。その廉価な電力に目をつけたのが海外の大企業で、アルミの精錬を中心にした工場の誘致は頻繁となり、それを原因とする環境破壊も社会問題化している。

 テロといっても中年女性がひとりでやっていること。行為は大胆不敵だが、警察の網をなんとかくぐり抜けてきた感が強い。官僚の秘密の協力者からは、警察の本気度を警告される。ヨガの先生をしている双子の姉は良き理解者だが、心配もしている。ついに危機一髪まで追い詰められたハットラを救うのはナイスガイの牧場主だった。

 アイスランドでは女性の地位向上を目指す運動が盛んで、男女平等指数はナンバーワンを誇る。同性婚にも理解があるなど、その先進性は個人にも波及している。現在の首相も女性が務めているから、行動する女性・ハットラは奇異な存在ではないのだろう。また、一方で彼女は母親になることを夢見ていて、ウクライナの孤児を養子に迎えようと手続きを進めている。

 ハットラの決断の区切りに現れる楽隊の挿入といい、過激な思想を孕んで重くなる話を、微妙なユーモアを交えて爽快感すらただよう寓話に仕上げた演出は素晴らしい!

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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