岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品ナチス第三の男 B! ナチス高官ハイドリヒ暗殺計画の全貌 2019年04月11日 ナチス第三の男 ©Photo by Bruno Calvo All rights reserved 【出演】ジェイソン・クラーク、ロザムンド・パイク、ジャック・オコンネル、ジャック・レイナー、ミア・ワシコウスカ 【監督】セドリック・ヒメネス 成長する怪物 美しくも悲愴なレジスタンス ラインハルト・ハイドリヒは、ナチスでもその冷酷さから“金髪の野獣”と呼ばれ、恐れられた存在だった。しかし、ヒムラーやアイヒマン、ゲーリングやヘスといった、悪名高き人物たちの陰にあり、映画などで表立って描かれることは少なかった。 1942年5月27日、チェコ・プラハ。国家保安本部長官となったハイドリヒはベーメン・メーレン保護領(=チェコ)の副総監を兼務していた。統治本部へ向かう公用車に乗り込み、いつもと変わらない一日が始まる。その途中、ハイドリヒ暗殺計画は実行される。 映画はここから回想となる。まず、海軍を不名誉除隊となる軍法会議。女性問題が絡んだ私情により軍を追いやられ、大きなトラウマを抱えることになる。その後、親衛隊への入隊を決める過程や、諜報活動で頭角を現すようになるまでは、随所で妻リナの存在が際立つ。 ハイドリヒが絶大な権力を手に入れた要因には、ユダヤ人虐殺を推し進めた首謀者であったことが挙げられる。これには彼の出自がユダヤと噂されたことがあり、その否定のため、極度な嫌悪をもって、排除する方向に向かったのではないかと推測されている。 1941年秋、ハイドリヒは保護領の副総監の任に就く。絶大な権力者となった怪物の暴走を止めるべく、チェコ亡命政府は2人の若き兵士をプラハに送り込む。 回想の視点が暗殺者であるレジスタンス側に移行することで、映画の趣も変化する。雪原に投下された有志は、協力者とともに緻密な計画を実行すべく、プラハの街に深く侵入する。暗殺計画実行後の逃亡は美しくも悲愴な道行に見える。 残されている実際のハイドリヒの写真からは、演じたジェイソン・クラークのような厳つさはなく、神経質な官僚に見える。映画が美醜の背中合わせのように、男の狂気も内に隠されていたのかもしれない。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (9)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2017年12月13日 / 十日町シネマパラダイス(新潟県) 震災を乗り越えて街に再び映画の灯を取り戻す 2020年10月14日 / シネマスコーレ(愛知県) 若松孝二監督が遺した学校という名の小さな映画館 2021年04月14日 / 宮崎キネマ館(宮崎県) 南国の街で良質な映画を送り続けるミニシアター more
成長する怪物 美しくも悲愴なレジスタンス
ラインハルト・ハイドリヒは、ナチスでもその冷酷さから“金髪の野獣”と呼ばれ、恐れられた存在だった。しかし、ヒムラーやアイヒマン、ゲーリングやヘスといった、悪名高き人物たちの陰にあり、映画などで表立って描かれることは少なかった。
1942年5月27日、チェコ・プラハ。国家保安本部長官となったハイドリヒはベーメン・メーレン保護領(=チェコ)の副総監を兼務していた。統治本部へ向かう公用車に乗り込み、いつもと変わらない一日が始まる。その途中、ハイドリヒ暗殺計画は実行される。
映画はここから回想となる。まず、海軍を不名誉除隊となる軍法会議。女性問題が絡んだ私情により軍を追いやられ、大きなトラウマを抱えることになる。その後、親衛隊への入隊を決める過程や、諜報活動で頭角を現すようになるまでは、随所で妻リナの存在が際立つ。
ハイドリヒが絶大な権力を手に入れた要因には、ユダヤ人虐殺を推し進めた首謀者であったことが挙げられる。これには彼の出自がユダヤと噂されたことがあり、その否定のため、極度な嫌悪をもって、排除する方向に向かったのではないかと推測されている。
1941年秋、ハイドリヒは保護領の副総監の任に就く。絶大な権力者となった怪物の暴走を止めるべく、チェコ亡命政府は2人の若き兵士をプラハに送り込む。
回想の視点が暗殺者であるレジスタンス側に移行することで、映画の趣も変化する。雪原に投下された有志は、協力者とともに緻密な計画を実行すべく、プラハの街に深く侵入する。暗殺計画実行後の逃亡は美しくも悲愴な道行に見える。
残されている実際のハイドリヒの写真からは、演じたジェイソン・クラークのような厳つさはなく、神経質な官僚に見える。映画が美醜の背中合わせのように、男の狂気も内に隠されていたのかもしれない。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。