岐阜新聞 映画部

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理不尽な運命に立ち向かう恋人たち

2019年04月01日

ビール・ストリートの恋人たち

©2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

【出演】キキ・レイン、ステファン・ジェームス、レジーナ・キング、コールマン・ドミンゴ、テヨナ・パリス、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ディエゴ・ルナ、デイヴ・フランコ、ペドロ・パスカル、エド・スクライン
【監督・脚本】バリー・ジェンキンス

ジャズが聴こえるハーレムのストリート

 幼なじみのティッシュ(キキ・レイン)とファニー(ステファン・ジェームス)は、お互いが男と女として意識するようになり、ごく自然に結ばれる。しかし、無実の罪によりファニーは逮捕されてしまう。理不尽な力によってふたりは切り裂かれる。

 原作はジェイムズ・ボールドウィンが74年に発表した小説で、翻訳初出時の題名は「ビール・ストリートに口あらば」。昨年公開された『私はあなたのニグロではない』(ラウル・ペック監督)は、ボールドウィンの未完の原稿をもとにしたドキュメンタリーで、60年代に公民権運動の主導的な立場にありながら、暗殺された3人の黒人活動家(メドガー・エヴァース、マルコムX、キング牧師)を描いている。一向に改善されない人種差別的な風潮を憂う機運は、高まりを見せている。そのことからも、今を生きる世代である監督のバリー・ジェンキンスが、ボールドウィンにその思想的な基軸を求めたことはよく理解できる。

 ファニーが逮捕された後、ティッシュが妊娠していることが分かる。ここで、ティッシュのリヴァーズ家とファニーのハント家が対峙する家族の集まりの場面が生々しい。70年代のニューヨーク・ハーレムの住民の生活風俗が垣間見られるのは興味深いし、何より、ファニーの母親の宗教的な道徳心が凄まじい。敬虔なキリスト教徒の信条に、息子の悲運が重なった上でのパニックと見えなくもないが、家族のありようと繋がりが見てとれる。無実の罪を晴らすために奔走する姿も痛々しいが、ティッシュの母親が被害者の女性を追って、プエルトリコまで行くエピソードは見せ場としては弱い。

 また、全編にカットバックで挿入されるティッシュとファニーの恋模様が、些か過剰な思い入れで甘美に流されるのが残念だ。

 ビール・ストリートはテネシー州メンフィスにあり、ブルース発祥の地とされる。題名には黒人社会の象徴的な場という意味が込められている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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