岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

練り込まれた脚本と主演2人の円熟した演技

2019年03月15日

天才作家の妻 40年目の真実

© META FILM LONDON LIMITED 2017

【出演】グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーター、マックス・アイアンズ、ハリー・ロイド、アニー・スターク
【監督】ビョルン・ルンゲ

誰にも言えない彼女の憤りは果てしなく深い

 芸能人やスポーツ選手、政治家や会社の経営者など文筆を本業としない人たちにとってのゴーストライターは半ば公然の秘密であるが、プロの小説家、ましてやノーベル文学賞受賞という世界的な作家の妻がゴーストライターだったなどというスキャンダルは、あってはならないことである。

 本作は、そのあってはならない秘密を縦糸に、夫婦間の確執や女性の社会進出などを横糸に描いたミステリアスでインテレクチュアルな作品となっている。

 映画は、大小説家のジョゼフ(ジョナサン・プライス)とその妻ジョーン(グレン・クローズ)のキャッスルマン夫妻が、ノーベル賞受賞の一報を電話で聞き、ベッドの上で飛び跳ねながら喜ぶ2人の姿から、ストックホルムでの授賞式に至るまでの現代パートと、大学時代に教授と学生だった2人が不倫の恋に落ち、結ばれてから文学で注目されるようになっていくまでの回想パートを並行して描いていく。

 2人は、はた目には世界的大作家とその彼を内助の功で支える妻という仲睦まじい理想的な夫婦で、家庭内でもその役割分担を疑ってこなかったように見える。しかし、ノーベル文学賞という最高の栄誉をきっかけに、それまで良好を保ってきた夫婦関係に軋みが生じてくる。

 理論家でキャリアもあるが才能に乏しかった夫と、才能も実力もあるが女性というだけで作家を諦めざるを得なかった妻。ジョーンの役割が、完全なゴーストライターだったのか、有能なる編集者であったのかは最後まで分からないが、妻の果たしてきた役割はとても大きかったのであろう。彼女の憤りは誰にも言えないだけに果てしなく深い。一方で、妻の直接的援助がなければ成功しなかったであろう夫の屈辱的な思いも、痛いほどよく分かる。

 この映画が代筆告発というだけのキワモノでなく、優れた夫婦映画になっているのは、練り込まれた脚本と主演2人の円熟した演技による事は言うまでもない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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