岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

声を出す障害者 それを受けとめる健常者

2019年02月15日

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

Ⓒ2018 「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

【出演】大泉洋、高畑充希、三浦春馬 ほか
【監督】前田哲

わがままから生まれた出会いという宝物

 難病や身障者のことを映画にすることは難しい。当事者の側から見れば、映画になった物語は現実を知らない、ある一面しか描かない見識の浅いものとされ、非難の対象となることがある。映画を作る側は、それを避ける手段として、現実にあった物語であることを強調することがある。ひとつの事実を提示することで、多面性がある当事者にも理解を求める…うがった見方をすれば、“かわす”意図が見えてしまう。また、事実に則した物語ではあっても、劇的に脚色され、甘美に変化することも多く、それは“お涙頂戴”という、また別の偏見で区分けされてしまうことがある。

 札幌で暮らす鹿野靖明(大泉洋)は、幼い時から難病の筋ジストロフィーを患い、動かせるのは首と手だけ。介護なしでは生きられないが、病院を嫌い自立生活を目指した。とは言え、生活の大半はボランティアに頼るしかない。彼のまわりには沢山の人々が集まり、甲斐甲斐しく世話をしている。医大生の田中(三浦春馬)は、恋人の美咲(高畑充希)を伴って鹿野のところにやってきた。大きな声でしゃべりまくりながら、ボランティアにあれこれ指図する鹿野を目の当たりにし、その横暴ぶりに美咲は呆れ果て、次第にそれは怒りに変わる。

 1979年に放映されたNHKのTVドラマ「男たちの旅路 車輪の一歩」(脚本・山田太一)は、車椅子生活を送る若者たちを描いている。"バリアフリー”という概念、言葉すらもまだ認知されていない時代、障害者が“声”を出してはいけないのか?という問題提示は画期的だった。この声は、生活の中で障害者が助けを求めることを言う。鹿野のそれは声の出しすぎか?

 鹿野の世話を主導的に差配する人がいる。これは悟り域で、美咲たちとはあきらかな温度差がある。その人たちの葛藤を見たかったというのが本音だが…。答えは映画を観終わった後に見えてくるだろうか?

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

90%
  • 観たい! (9)
  • 検討する (1)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る