岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品シシリアン・ゴースト・ストーリー B! 叶わなかった純愛を映画だけでも実らせてあげようとしたレクイエム 2019年02月11日 シシリアン・ゴースト・ストーリー ©2017 INDIGO FILM CRISTALDI PICS MACT PRODUCTIONS JPG FILMS VENTURA FILM 【出演】ユリア・イェドリコヴスカ、ガエターノ・フェルナンデス、ヴィンチェンツォ・アマート、サビーネ・ティモテオ 【監督・脚本】ファビオ・グラッサドニア、アントニオ・ピアッツァ ジュゼッペに対する最高の愛情表現 何の落ち度もない少年が、いわれなき理由によってマフィアに長期間監禁され、筆舌に尽くしがたい最期を迎える。1993年~96年にイタリアのシチリアで発生した実話を基にした本作は、誘拐された少年の絶望と恐怖、マフィアの掟の非情さと酷さ、周囲の大人たちの見て見ぬふりなどを描いているが、決して告発的でなく感傷的でも無く、むしろファンンタジー色の強い寓話的なつくりとなっている。 シチリア出身のファビオ・グラッサドニアとアントニオ・ピアッツァの2人の共同監督がこの映画に託したのは、殺された少年ジュゼッペ(ガエターノ・フェルナンデス)を可哀想な被害者として扱うのでなく、初恋の少女ルナ(ユリア・イェドリコヴスカ)との叶わなかった純愛を、せめて映画の中だけでも実らせてあげようとしたレクイエムなのである。 好きと言う感情が、まだ肉体を求める遥か前である13歳のルナとジュゼッペ。駆け引きも打算も無いプラトニックな段階で、突然引き裂かれた過酷な現実は、13歳の二人に重くのしかかる。 大人に差し掛かる直前のルナは、支配的で抑圧的な母をはじめ、いくら訴えようともちっとも動いてくれない大人たちに対して、髪の色を変えたりジュゼッペ探しのビラを作って配るなどして反発し反抗を企て、彼女なりの彼に対する思いを強めていく。会っていた時間よりも合わない時間の方がずっと長かったロミオとジュリエットのように、むしろ絆は深まっていく。 ルナとジュゼッペのそれぞれのイマジネーションはどこへでも飛んで行って、彼を助ける事もできるし、恋を育むこともできる。映画ならではの、これら目に見えるファンタジーシーンは、無念の中で死んでいったジュゼッペに対する2人の共同監督の最高の愛情表現である。 痛ましい事件を痛ましいままに描き、怒りの感情を表したり教訓にする映画もあってもいいが、被害者の痛みを解放してあげる映画もとてもいい。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (8)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2023年11月29日 / 私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰? 権力と闘う信念の女性の生き様で描く政治映画 2023年11月28日 / 私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰? モーリーンさんと権力側との闘いを描いた実話の社会派映画 2023年11月27日 / 燃えよドラゴン 劇場公開版4Kリマスター 私が人生の座右の銘にしている映画、『燃えよドラゴン』 more 2021年09月08日 / 【思い出の映画館】浅草東宝(東京都) 大晦日は浅草寺に詣でてオールナイトで年を越す 2018年09月05日 / 塩山シネマ(山梨県) 風光明媚な山梨の桃源郷にある小さな映画館 2022年01月26日 / シネマ・クレール(岡山県) 目の前を路面電車が通過する城下町の映画館 more
ジュゼッペに対する最高の愛情表現
何の落ち度もない少年が、いわれなき理由によってマフィアに長期間監禁され、筆舌に尽くしがたい最期を迎える。1993年~96年にイタリアのシチリアで発生した実話を基にした本作は、誘拐された少年の絶望と恐怖、マフィアの掟の非情さと酷さ、周囲の大人たちの見て見ぬふりなどを描いているが、決して告発的でなく感傷的でも無く、むしろファンンタジー色の強い寓話的なつくりとなっている。
シチリア出身のファビオ・グラッサドニアとアントニオ・ピアッツァの2人の共同監督がこの映画に託したのは、殺された少年ジュゼッペ(ガエターノ・フェルナンデス)を可哀想な被害者として扱うのでなく、初恋の少女ルナ(ユリア・イェドリコヴスカ)との叶わなかった純愛を、せめて映画の中だけでも実らせてあげようとしたレクイエムなのである。
好きと言う感情が、まだ肉体を求める遥か前である13歳のルナとジュゼッペ。駆け引きも打算も無いプラトニックな段階で、突然引き裂かれた過酷な現実は、13歳の二人に重くのしかかる。
大人に差し掛かる直前のルナは、支配的で抑圧的な母をはじめ、いくら訴えようともちっとも動いてくれない大人たちに対して、髪の色を変えたりジュゼッペ探しのビラを作って配るなどして反発し反抗を企て、彼女なりの彼に対する思いを強めていく。会っていた時間よりも合わない時間の方がずっと長かったロミオとジュリエットのように、むしろ絆は深まっていく。
ルナとジュゼッペのそれぞれのイマジネーションはどこへでも飛んで行って、彼を助ける事もできるし、恋を育むこともできる。映画ならではの、これら目に見えるファンタジーシーンは、無念の中で死んでいったジュゼッペに対する2人の共同監督の最高の愛情表現である。
痛ましい事件を痛ましいままに描き、怒りの感情を表したり教訓にする映画もあってもいいが、被害者の痛みを解放してあげる映画もとてもいい。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。