岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

才人監督による1977年ホラーのリメイク

2019年02月06日

サスぺリア

© 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

【出演】ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、ミア・ゴス、クロエ・グレース・モレッツ、ルッツ・エバースドルフ、ジェシカ・ハーパー
【監督】ルカ・グァダニーノ

ドイツの秋とオカルトの融合

 監督ルカ・グァダニーノの前作『君の名前で僕を呼んで』があまりに素晴らしかったので、本作も劇場で見たが、2本連続の傑作には至らなかった。オリジナルのダリオ・アルジェント監督作は1977年日本公開、ヒットはしたものの内容的には三流のホラーだった。ブームの火付けとなったウィリアム・フリードキンの『エクソシスト』には遠く及ばない凡作。それから約40年経って本作となったが、グァダ二ーノとしては題材の選択ミスとしか思えない。

 舞台は1977年のべルリン。本作は当時の社会背景を細かく描写する。街には当然壁があり、テロやハイジャックが頻発。ドイツ赤軍、バーダー・マインホフの最後のあがきだ。しかしながら、これは背景としてテレビやラジオからニュースとして流れるだけで、物語とは絡まない。

 また、前作では何も触れられなかった主人公の故郷も語られる。オハイオ州のアーミッシュ出身という新たな設定で、病気で瀕死の母親の映像が何度も出てくる。具体的にこの母親が後半の展開とどう関係するのか理解するのは難しい。

 アメリカから来た田舎娘が世界的コンテンポラリーバレエ団に入り、主役の座を射止め練習に打ち込んでいく、という前半部分は面白く見られるものの、バレエ団の仲間が失踪したり、陰惨な事故に遭うという展開は陳腐だ。バレエ団の振付師のティルダ・スウィントンやファスビンダー映画の主役を務めたイングリット・カーフェンらの存在感はあるものの、如何せんストーリーが荒唐無稽。1977年という時代設定もオリジナルを踏襲した域を出ず、意味をなしていない。

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

観てみたい

100%
  • 観たい! (3)
  • 検討する (0)

語り手:シネマトグラフ

外資系資産運用会社に勤務。古今東西の新旧名画を追いかけている。トリュフォー、リヴェット、ロメールなどのフランス映画が好み。日本映画では溝口と成瀬。タイムスリップして彼らの消失したフィルムを全て見たい。

ページトップへ戻る