ペーソスとヒューマンを盛り込みドラマティックに描く人間賛歌
2019年02月04日
家(うち)へ帰ろう
©2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.
【出演】ミゲル・アンヘラ・ソラ、アンヘラ・モリーナ、オルガ・ポラズ、ユリア・ベアホルト、マルティン・ピロヤンスキー
【監督・脚本】パブロ・ソラルス
ラストシーンは何の言葉もいらない。
人生の最終盤に差し掛かったアルゼンチンの仕立て屋アブラハム(ミゲル・アンヘル・ソラ)が、命の恩人の親友との約束を果たそうと、道中出くわす様々な善き人々に助けられながら、70年ぶりに故郷ポーランドまでスーツを届けに行くという人情噺。感動のフィナーレを迎えるまでを、ペーソスとヒューマンを盛り込みながらドラマティックに描いていく人間賛歌の映画だ。
この映画の出発点アルゼンチンは、移民を積極的に受け入れている多民族国家であり、世界で7番目に多いユダヤ人がブエノスアイレスを中心に南米最大のコミュニティを作っている。一方で親独国でもあり、ナチスの親衛隊将校アイヒマンが1960年まで潜伏していた事でも知られる。
最初アブラハムは、頑固で偏屈な老人として登場するが、ストーリーが進むに従って、若い頃過ごしたポーランドには、その名前さえ憚られるほどの強烈なトラウマがあること、人間の残酷さを目の当たりにし、記憶に蓋をしてきたことが分かってくる。 今まで語らなかった過去であるが、アブラハムにこういった行動を起こさせたのは、彼が現在の世界的なナショナリズムの台頭に危機感を覚え、二度と過ちを犯さないよう、新しい世代に伝えていきたかったのだろうと想像できる。年をとってから戦争の語り部となる、日本の戦争体験者と同じ心境なのかもしれない。
70年前、生死が紙一重だったホロコーストの過酷な状況の中、親友の命がけの行動により危機一髪で救われたアブラハム。親友はユダヤ人排斥の空気に流されず、人間として彼を助ける。
そして現代。旅先で出会った飛行機の青年、ホテルの女主人、絶縁状態の娘、ワルシャワの看護師たちの優しさ。そして、パリの駅で、今まで蛇蝎のごとく嫌っていたドイツ人の女性文化人類学者に助けられたアブラハム。意味も無く一方的に嫌う事が間違っていたと分かってくる。
ラストシーンは何の言葉もいらない。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。