岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品暁に祈れ B! 劣悪な刑務所に収監されたイギリス人青年 2019年01月18日 暁に祈れ ©2017 - Meridian Entertainment - Senorita Films SAS 【出演】ジョー・コール、ソムラック・カムシン、ポンチャノック・マーブグラン、ヴィタヤ・パンスリンガム 【監督・脚本】ジャン=ステファーヌ・ソヴェール 思わず目を背けたくなる本物の迫力 試合前の控室。ファイターの拳にバンデージを巻く少年がいる。彼は東南アジア系の容姿をしている。身体や顔にワセリンを塗りたくる。気付薬のアンモニアとは違う、白い粉を鼻から吸い込み自らを鼓舞するのはイギリス人のファイター・ビリー(ジョン・コール)で、スポーツとは反する薬漬けの生活を暗示する。 試合の後、別の日。当局に部屋に踏み込まれ、ビリーはあっさり逮捕されてしまう。そして、地獄のような刑務所生活が始まる。 アラン・パーカー監督の『ミッドナイト・エクスプレス』(78)は、トルコのアンカレッジの空港で、麻薬の所持、密輸が発覚し、刑務所に収監されたアメリカ人青年ビリーを描いている。異文化のもと、苛酷な環境の刑務所での苦難を描き、実際の体験を原作にしているなど、二本の映画には共通点が多い。主人公の名前がビリーというのも同じ、そして麻薬が絡んでいる。 世界最悪の環境と言われるタイの刑務所は、まさに地獄そのもので、リンチ、殺人、レイプが横行し、刑務官への賄賂も日常化している。映画は実際の刑務所で撮影が行われた。暗くじめじめとした場の雰囲気は本物の迫力で、収監されている囚人役のうち、主要キャスト以外は全て元囚人という、徹底したリアリズムが貫かれている。囚人の多くは全身にタトゥーを入れていて(これも本物)、その存在と威圧感は圧倒的。そんな生活の中、ビリーが生きる糧を見つける。それは、刑務所内にあるムエタイチームへの参加だった。 撮影は手持ちのカメラが多用され、微妙な揺らぎとともに、被写体への接写が行われる。基本的には長回しのシーンがほとんどで、これは生々しい空気感を伝える手法としては成功している。緊迫感から生じる息苦しさや、囚人の体臭までが感じ取れるのは、ジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督の演出の力と言える。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (9)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2020年07月01日 / 新世界国際劇場(大阪府) 様々な人間模様が繰り広げられる新世界の映画館 2024年06月12日 / シネマポスト(山口県) 下関の漁港口にあった戦後から続く郵便局を映画館に。 2023年01月25日 / 敦賀アレックスシネマ(福井県) お客さんと一緒に映画を楽しむスタッフがいる映画館。 more
思わず目を背けたくなる本物の迫力
試合前の控室。ファイターの拳にバンデージを巻く少年がいる。彼は東南アジア系の容姿をしている。身体や顔にワセリンを塗りたくる。気付薬のアンモニアとは違う、白い粉を鼻から吸い込み自らを鼓舞するのはイギリス人のファイター・ビリー(ジョン・コール)で、スポーツとは反する薬漬けの生活を暗示する。 試合の後、別の日。当局に部屋に踏み込まれ、ビリーはあっさり逮捕されてしまう。そして、地獄のような刑務所生活が始まる。
アラン・パーカー監督の『ミッドナイト・エクスプレス』(78)は、トルコのアンカレッジの空港で、麻薬の所持、密輸が発覚し、刑務所に収監されたアメリカ人青年ビリーを描いている。異文化のもと、苛酷な環境の刑務所での苦難を描き、実際の体験を原作にしているなど、二本の映画には共通点が多い。主人公の名前がビリーというのも同じ、そして麻薬が絡んでいる。
世界最悪の環境と言われるタイの刑務所は、まさに地獄そのもので、リンチ、殺人、レイプが横行し、刑務官への賄賂も日常化している。映画は実際の刑務所で撮影が行われた。暗くじめじめとした場の雰囲気は本物の迫力で、収監されている囚人役のうち、主要キャスト以外は全て元囚人という、徹底したリアリズムが貫かれている。囚人の多くは全身にタトゥーを入れていて(これも本物)、その存在と威圧感は圧倒的。そんな生活の中、ビリーが生きる糧を見つける。それは、刑務所内にあるムエタイチームへの参加だった。
撮影は手持ちのカメラが多用され、微妙な揺らぎとともに、被写体への接写が行われる。基本的には長回しのシーンがほとんどで、これは生々しい空気感を伝える手法としては成功している。緊迫感から生じる息苦しさや、囚人の体臭までが感じ取れるのは、ジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督の演出の力と言える。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。