岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品暁に祈れ B! 刑務所の中で生きる希望を取り戻していく、体感型プリズンムービー 2019年01月18日 暁に祈れ ©2017 - Meridian Entertainment - Senorita Films SAS 【出演】ジョー・コール、ソムラック・カムシン、ポンチャノック・マーブグラン、ヴィタヤ・パンスリンガム 【監督・脚本】ジャン=ステファーヌ・ソヴェール 原則個人競技である格闘技は名作・傑作の宝庫 世界中のバックパッカーが集まるタイ。そこのカオスのような喧騒の中で、ヘロイン中毒となってしまったイギリス人ボクサー、ビリー・ムーア(ジョー・コール)が、生き地獄とおぼしき最底辺の刑務所の中で見つけた一筋の糸・ムエタイを通して、全力で生きる希望を取り戻していく、体感型プリズンムービーである。 格闘技は原則個人競技であるため、どん底から栄光へ這い上がっていくプロセスがそのまま個人の成長と重ね合わせて描きやすく、名作・傑作の宝庫となっているジャンルである。このジャンルの成功の鍵は、まずはどん底の部分のリアリティであるが、本作で描かれるビリーが置かれた状況は、今まで類を見ないほどの絶望的な過酷さである。 刑務所の囚人たちのほとんどは全身入れ墨、日常は半裸状態で行動し、夜は魚市場の魚のようにぎゅうぎゅう詰めの中で眠る。暴力は日常茶飯事、レイプまであり、賄賂さえ払えばクスリをはじめ何でも手に入る。囚人どうしはタイ語で話していて(字幕は出ない)、ビリーにも(観客にも)会話の内容が分からず、不気味さと不安さで胸が張り裂けそうになる。ここら辺りの情景が執拗に描かれているため、観客も刑務所体験をしているような錯覚に陥ってくる。それもそのはず、撮影は本物の刑務所で行われ、主要キャスト以外は、本物の元囚人を使っているとのこと。異様なリアリティは、そこから生まれてくるのだ。 そのような孤独と絶望の中から、元ボクサーのビリーは、ムエタイと出会っていく。刑務所の中での試合にいくら勝とうが、刑務所から出られるわけではない。しかし、彼は今までの人生の中でおそらく初めて、己の自己実現のために真剣に闘いに挑む。 映画の当初は、自堕落で刹那的な生き方をしてきたビリーであるが、苦しみを突き抜けた後の彼は、実にカッコよく見えてくるのだ。 ある人が面会にやってくるラストシーン、素敵な終わらせ方である。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年03月27日 / COUNT ME IN 魂のリズム ドラムを主役にした音楽ドキュメンタリー 2024年03月27日 / COUNT ME IN 魂のリズム 全編ドラム愛に満ち溢れた、身体で感じられる音楽映画 2024年03月26日 / 瞳をとじて 時と記憶をたどる哀しくとも美しい物語 more 2019年10月02日 / 中州大洋映画劇場(福岡県) ハリウッドにまで功績が知れ渡った博多にある老舗映画館 2023年04月12日 / 丸の内TOEI(東京都) 銀座にある東映のメイン劇場で映画の醍醐味を満喫。 2018年04月11日 / 日田シネマテーク・リベルテ(大分県) 山間にある水郷の街で、映画に向き合う至福の時間 more
原則個人競技である格闘技は名作・傑作の宝庫
世界中のバックパッカーが集まるタイ。そこのカオスのような喧騒の中で、ヘロイン中毒となってしまったイギリス人ボクサー、ビリー・ムーア(ジョー・コール)が、生き地獄とおぼしき最底辺の刑務所の中で見つけた一筋の糸・ムエタイを通して、全力で生きる希望を取り戻していく、体感型プリズンムービーである。
格闘技は原則個人競技であるため、どん底から栄光へ這い上がっていくプロセスがそのまま個人の成長と重ね合わせて描きやすく、名作・傑作の宝庫となっているジャンルである。このジャンルの成功の鍵は、まずはどん底の部分のリアリティであるが、本作で描かれるビリーが置かれた状況は、今まで類を見ないほどの絶望的な過酷さである。
刑務所の囚人たちのほとんどは全身入れ墨、日常は半裸状態で行動し、夜は魚市場の魚のようにぎゅうぎゅう詰めの中で眠る。暴力は日常茶飯事、レイプまであり、賄賂さえ払えばクスリをはじめ何でも手に入る。囚人どうしはタイ語で話していて(字幕は出ない)、ビリーにも(観客にも)会話の内容が分からず、不気味さと不安さで胸が張り裂けそうになる。ここら辺りの情景が執拗に描かれているため、観客も刑務所体験をしているような錯覚に陥ってくる。それもそのはず、撮影は本物の刑務所で行われ、主要キャスト以外は、本物の元囚人を使っているとのこと。異様なリアリティは、そこから生まれてくるのだ。
そのような孤独と絶望の中から、元ボクサーのビリーは、ムエタイと出会っていく。刑務所の中での試合にいくら勝とうが、刑務所から出られるわけではない。しかし、彼は今までの人生の中でおそらく初めて、己の自己実現のために真剣に闘いに挑む。
映画の当初は、自堕落で刹那的な生き方をしてきたビリーであるが、苦しみを突き抜けた後の彼は、実にカッコよく見えてくるのだ。
ある人が面会にやってくるラストシーン、素敵な終わらせ方である。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。