岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

姿の見えない少年と盲目の少女の恋の物語

2018年12月15日

エンジェル、見えない恋人

©2016 Mon Ange, All Rights Reserved.

【出演】フルール・ジフリエ、マヤ・ドリー、エリナ・レーヴェンソン
【監督・脚本】ハリー・クレフェン

声と匂いで確かめる…本当に見えてくるもの

 ハリウッド製の映画の一部では、映画製作のために、いろいろなリサーチが行われる。その第一義は、映画の成功をヒットに特化した商業主義であることが多い。ターゲットになる観客にあわせて脚本は改編され、ラストはいくつものパターンが用意されたりする。極端な言い方をすれば、映画は現場(=撮影)以前のデスク(=会議室)でつくられる。完成した映画は理論整然とし、分かりやすさで統一されてしまう。

 『エンジェル、見えない恋人』は、そういうハリウッド製映画とは遠いベルギー(フランス語)の映画で、情報は限定される。

 「姿の見えない少年 “エンジェル” と、盲目の少女 “マドレーヌ”。世界の片隅で出会ったふたりの、小さな恋の物語」――この宣伝での情報開示は、普通であれば出し過ぎと言われかねないが、この映画はそんなに簡単ではない。

 ルイーズ(エリナ・レーヴェンソン)は奇術師のパートナーと巡業生活を送っていたが、ある日突然、そのパートナーはイリュージョンのごとく姿を消す。ひとりぼっちになったルイーズは、精神に異常をきたし施設に収容される。その時、彼女は身重の体だった。生まれた男の子はエンジェルと名づけられ、施設の部屋から出ることのない母子の生活が始まる。

 ここまでの導入部分からして普通ではない。ルイーズが捨てられた(?)理由も分からないし、収容された施設が病院(?)であるのかも明確には語られない。何より、エンジェルが見えない(?)ということが、観客の不安定さを増殖させる。しかし、描かれる日常は当たり前のように穏やかなまま。そこに盲目の少女マドレーヌがあらわれる。

 途中、この物語を信じるのか?と問い詰められはする。しかし、見える見えないを超越した、声と匂いで確かめ合うふたりの恋に、ドキリとする瞬間があるのも確か!不思議な魅力あふれるファンタジーだ。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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