岐阜新聞 映画部

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大杉漣と6人の個性派俳優の芝居を堪能

2018年11月25日

教誨師

©「教誨師」members

【出演】大杉漣、玉置玲央、烏丸せつこ、五頭岳夫、小川登、古舘寛治、光石研
【監督・脚本】佐向大

見事なリアクション演技は、主演男優賞候補筆頭と言えるほど素晴らしい

 今年2月に亡くなった大杉漣の最後の主演映画であり、唯一のプロデュース作である。 

 拘置所に於ける教誨師(大杉漣)と6人の死刑囚の面談を描いたこの作品は、個性派の名優・大杉漣がプロデュースしただけあって、役者の映画的なリアルな芝居を堪能させてくれる秀作になっている。

 設定から演劇的なオムニバス映画を予想したが、数回にわたる6人の死刑囚とのそれぞれの面会シーンが時系列に沿って絶妙な長さで組み合わされ、その構成の妙に巧みなキャメラワークと編集の上手さが加わって、演劇とは一線を画す映画的な魅力を放っている。

 死刑囚は死刑が執行されるまで、刑務所ではなく拘置所に収容されているとのこと。そして、教誨師は受刑者の心の救済につとめ、改心できるように導くボランティアの宗教家であるらしい。この作品の主人公・佐伯はプロテスタントの牧師の教誨師で、半年前に着任したばかりの設定である。

 6人の死刑囚は、気さくなヤクザの組長・吉田(光石研)、一切口を開こうとしない男・鈴木(古舘寛治)、饒舌な関西女・野口(烏丸せつこ)、ホームレスの老人・進藤(五頭岳夫)、子煩悩なおとなしい男・小川(小川登)、大量殺人者の若者・高宮(玉置玲央)で、皆個性的なキャラクターを好演している。

 そして、彼らと対峙する教誨師・佐伯を演じる大杉漣は、受けの芝居の中で見事なリアクション演技を見せ、今年の主演男優賞候補筆頭と言えるほどに素晴らしい。今更ながらその死が惜しまれてならない。

 監督・脚本は『休暇』の脚本を書いた佐向大。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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