岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

障害者になった事を「可哀想」でなく「個性」として捉えているのが素晴らしい

2018年11月12日

ブレス しあわせの呼吸

©2017 Responaut Productions Ltd.

【出演】アンドリュー・ガーフィールド、クレア・フォイ、トム・ホランダー、ヒュー・ボネヴィル
【監督】アンディ・サーキス

障害は、社会の方が作り出している

 かつて、重い障害者は家の中か病院の中に半ば閉じ込められ、家族や医師にコントロールされて暮らしていた。この映画の主人公であるロビン(アンドリュー・ガーフィールド)は、28歳の時に突然ポリオを発症して、首から下が全身まひになり、自力呼吸もできず、一生をベッドの上で過ごさなければならなくなる。「死にたい」と絶望の淵に突き落とされるロビンだが、この映画の製作者である彼の息子ジョナサン・カヴェンディッシュの思い出は、「いつも笑顔とユーモアを絶やさず、エネルギッシュな両親」であった。

 重い障害者が病院の外へ出るなど考えられなかった1958年、妻のダイアナ(クレア・フォイ)の後押しもあり、リスク覚悟で外へ打って出ることにより、新しい人生の歯車が回り始める。

 運命を受け入れ、障害をひとつの個性と捉え、「どう生きるか」を考えていく。そんな彼の周りには、彼を支援し応援する人たちが集まってくる。友人の開発した人工呼吸器付きの車椅子で街へ出れば、今まで障害者を外で見たことがなかった健常者たちは彼を奇異の目で見るが、そんなのへっちゃらである。バリアフリーの概念などほとんどなかった当時だから、車椅子での移動は困難を伴っていたと思うが、ようするに障害は、社会の方が作り出しているのだとよく分かる。

 映画は、立ちはだかる障害を知恵と勇気とみんなの協力で突破し、障害者に対する理解により、障害者が徐々に社会に受け入れられていく様子を、ユーモアとサスペンスを交えながら描いていく。

 日本では相模原の事件や、中央省庁での障害者雇用数大量水増し問題など「障害者と共に生きる=共生」というにはほど遠い現実があるが、理解者も増えてきており、鉄道など公共交通機関では日常的に車椅子の人を見かける。

 この映画は、障害者になった事を「可哀想」でなく「個性」として捉えているのが素晴らしく、共感を覚える事ができる。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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