岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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世界中の共感を呼ぶ法廷映画の新たな傑作

2018年11月06日

判決、ふたつの希望

©2017 TESSALIT PRODUCTIONS - ROUGE INTERNATIONAL - EZEKIEL FILMS - SCOPE PICTURES - DOURI FILMS

【出演】アデル・カラム、リタ・ハーエク、カメル・エル=バシャ、クリスティーン・シュウェイリー、カミール・サラーメ、ディヤマン・アブー・アッブード
【監督・脚本】ジアド・ドゥエイリ

社会問題から悲劇的な歴史まで炙り出す、深みのある法廷劇

 中東のレバノンから正真正銘の傑作がやってきた。

 キリスト教徒のレバノン人男性とパレスチナ難民男性の衝突を描いて、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『判決、ふたつの希望』である。

 実話の映画化がもてはやされる昨今、自身の些細な口論の実体験をヒントに生み出されたオリジナル脚本により、難民・人種差別等の社会問題から、民族や宗教の対立に根差した悲劇的な歴史まで炙り出す、深みのある法廷劇を創作したジアド・ドゥエイリ監督を大いに讃えたい。パレスチナ問題という中東の複雑な政治・社会状況を描きながら、世界中に共感を呼ぶ普遍的な映画にしているのも素晴らしい。

 侮辱的な言動に端を発した衝突が法廷に持ち込まれ、マスメディアの報道もあって国全体を巻き込む騒乱へと発展していく。そして、裁判を通じて、内線・民族紛争等により主人公たちが背負った心の傷が明かされていく。

 緻密なドラマ構成、人間臭い人物造形、豊かなディテール。完成度の高い脚本の中、対立する主人公ふたりが歩み寄るふたつのシーンが特に印象に残る。それは、ふたりの男が悲しい過去の出来事が生んだ怒りから解き放たれ、相手に対して人間的な思いやりで接する素敵な場面であり、観客はそこに希望の光を見るであろう。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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