岐阜新聞 映画部

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自殺志願者と向き合う住職・根本一徹さん追った心のドキュメンタリー

2018年10月20日

いのちの深呼吸

©DRIFTING CLOUD PRODUCTIONS, LLC 2017

【出演】根本一徹
【監督・製作】ラナ・ウィルソン

引っ張りあげず、無理に押し上げず、伴走する

 「死んでしまいたい」と絶望的な気持ちになった時、相談相手から上から目線で諭されたり、意味なく励まされたり、説教口調で叱られたりしたらどうなるだろう?親や子ども、会社の上司など利害関係のある「タテの関係」、友人や恋人、会社の同僚など同一視点になりがちな「ヨコの関係」。近しい関係ほど、かえって「誰も分かってくれない」と思えてしまうかもしれない。

 こういう時、本人の過去やいまの状況をあまりよく知らない、利害関係のない他人の方が、本音を率直に言えて真摯に聞いてもらえる可能性がある。これを「ナナメの関係」というが、本作はまさにこの「ナナメの関係」によって、日々自殺志願者と向き合っている、岐阜県関市の大禅寺住職・根本一徹さんの活動を追った、心のドキュメンタリーである。

 この映画からは、自殺を防止するための明確な枠組みも出てこないし、答えも無い。ましてや、住職の派手なパフォーマンスや必死な形相も皆無だ。あるのは、ただただ彼らの話を聞き、一緒に食事をし、一緒に考え、寄り添うように向き合う姿である。根本さんは、決して自分の考えを押し付けたり、死にたいという気持ちを全否定しない。

 根本さんの素晴らしさは「自分が救ってやる、解決してやる」という視点が一切ない点だ。精神科医やカウンセラーなどの専門家の支援も大事にしながら、自殺志願者同士でのワークショップを開催して、一緒に悩みを共有する場を提供し、光を見つけ出すお手伝いをする。悩んでいる人たちに手を差しのべて引っ張りあげるのではなく、お尻を無理に押し上げるのでもなく、伴走しているのである。

 ニューヨーク在住のドキュメンタリー作家ラナ・ウィルソン監督の本作は、日本の自殺率がどうして先進国で最悪レベルかには踏み込まず、根本さんの活動に絞って描いている。だからこそ、「命の大切さ」を浮き立たせ、「いのちの深呼吸」を感じさせてくれるのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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