岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

彼らのルーツや音楽にかける情熱を余すところなく描いたドキュメンタリー

2018年09月29日

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス

©2017 Broad Green Pictures LLC

【出演】オマーラ・ポルトゥオンド(ヴォーカル)、マヌエル・“エル・グアヒーロ”・ミラバール(トランペット)、バルバリート・トーレス(ラウー)、エリアデス・オチョア(ギター、ヴォーカル)、イブライム・フェレール(ヴォーカル)
【監督】ルーシー・ウォーカー

まさに音楽は国境を越えた。

 ヨーロッパ系の音楽とアフリカ系の音楽が、ほぼ対等に交じり合った陽気で活力のあるキューバ音楽は、ソンやサルサやルンバやマンボなど、様々なラテン音楽のジャンルを生み出し、それらはキューバを離れ世界中で愛されている。そのルーツであるキューバの老音楽家たちで結成された「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は世界中で大ヒットし、1999年にはヴィム・ベンダースによってドキュメンタリー映画化され、これもまた大ヒットした。あれから18年、最後のアディオス(さようなら)ツアーに密着し、過去の秘蔵映像を交えながら、彼らのルーツや音楽にかける情熱を余すところなく描いたドキュメンタリーが本作である。

 86歳の伝説的歌姫オマーラの歌声は未だパワフルかつ情熱的で、歳を取ることを忘れているようだ。前作の後に亡くなったイブライムに捧げ、歌い上げるシーンは、音楽の神様が地上に舞い降りてきたような感動的な舞台となっている。

 そのイブライムの半生も劇的だ。激動のキューバで靴磨きをしながらも、歌うことを諦めなかった彼。思いもよらぬ突然の脚光に戸惑いながらも、充実した晩年を迎える。

 映画は、前作でのヴィム・ベンダースが撮影している様子も映し出す。そこには和気あいあいといった馴れ合いの様子も、音楽を悟ったような枯れた感じも全くない。音楽を愛し、音楽に命を懸けたミュージシャンたちの、妥協を許さない強固な意志のぶつかり合いが垣間見られる。

 キューバ政府は、音楽を国民の財産と考え、熱心に支援していた。2015年に米国と国交正常化した後、彼らはホワイトハウスに招かれる。オバマ大統領は「20年近くもの間、このグループは両国の力強い絆のシンボルでした。友情と文化と音楽の絆です。」と、その功績を称えた。まさに音楽は国境を越えたのである。

 高齢化社会の中で、再び光り輝いた彼らの生き生きとし、溌剌とした姿は実に誇らしく羨ましい。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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