岐阜新聞 映画部

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是枝監督の矜持を示した世界に誇る傑作

2018年08月03日

万引き家族

©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

【出演】リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、緒方直人、森口瑤子、山田裕貴、片山萌美、柄本明、高良健吾、池脇千鶴、樹木希林
【監督・脚本・編集】是枝裕和

犯罪の裏にある人間の哀しみや怒り、寂しさ

 特定の者に富が集中する新自由主義は、格差社会や地域コミュニティの崩壊を招き、新たなる貧困層を顕在化させた。『万引き家族』で描かれる疑似家族は、経済的格差だけでなく、教育機会、就労機会、健康機会にも恵まれない「持たざる者」であり、非正規労働の下層階級である。

 この疑似家族は主に犯罪で結びついている。高齢死亡者の年金不正受給、略取誘拐、不就学、強請。特にタイトルにもなっている「万引き」はその手口が生々しく描かれる。「金に困っているように見えない」「犯罪を許容しているようで違和感がある」などの批判があるが、是枝監督の意図はまさにそこにある。現代の貧困は相対的貧困であり、極貧階層のいない日本では、絶対的貧困が問題ではなく、将来に対する不安や社会との隔絶が問題なのである。監督は犯罪を正当化してなどおらず、その犯罪によって疑似家族は崩壊するのだが、犯罪の裏にある人間の哀しみや怒り、寂しさに目を向けようと意図しているのである。

 彼らはみんな働いている。ただし、非正規で。非正規労働者の収入が生活保護費を下回っているとのニュースに対し、保護費を引き下げろとの世論があったが、そうではなく、非正規労働者の賃金を引き上げるべきなのである。『万引き家族』は、現代日本のさまざまな矛盾を捉えているが、その背景にある真実まで読み取れる、非常に優れた映画である。

 印象的なシーンはいくつもあるが、中でも好きなのは、家族が縁側に出て花火を眺めるシーンだ。映像からは花火は一切見えず、音だけが聞こえる。都会の片隅で、肩寄せ合って楽しそうにしている家族の姿からは、格差に関係なく同じ花火で楽しんでいるという事実に共感し、繋がりを感じることができるのだ。

 国民の税金である文化芸術振興費補助金2000万円を助成されている本作は、公権力に都合のいい作品ではないが、是枝監督の矜持を示した世界に誇る傑作である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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