岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

社会の片隅で生きる歪な家族

2018年08月03日

万引き家族

©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

【出演】リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、緒方直人、森口瑤子、山田裕貴、片山萌美、柄本明、高良健吾、池脇千鶴、樹木希林
【監督・脚本・編集】是枝裕和

人の繋がりを見つめなおす時間は訪れるのか!?

 犯罪がある。スーパーで物色するのは親子か?無関係を装いながら、つかず離れず、盗みのレクチャーは囁かれる。

 父がいる。日雇いの現場に向かうが、肉体労働者には見えない脆弱な体を晒すのみ。子どもには盗みを教え、車上荒らしは俊敏にこなす。

 母がいる。大きくはないクリーニング工場でそつなく仕事をしている。洗濯物の確認作業で見つかる置き忘れを、平然と自分のポケットに突っ込む。

 祖母がいる。銀行のATMから頼りの年金を引き出す。もうひとつの収入は小遣いせびり…未亡人は後妻の子の家に上がりこむ。

 孫がいる。祖母を「おばあちゃん」と呼び、幼な子のように甘える。祖母の男の実子の子で家出して身を寄せている。歪んだ関係だが孫には違いない。しかし、父母との関係は見えてこない。風俗店に勤め、ガラス越しに男たちを癒す。

 子どもがいる。小学生5年生くらいか?確かな歳は分からないし、学校へ行く様子はない。父親には従順だが、嫌なものは拒絶する自我は持っている。

 そんな家族に、ある夜、妹が加わる。家族には血の繋がりもなく、歪で危うい結びつきに見える。乱雑に汚れた古家が安らぎの場所であるように、かたちはどうであれ、偽物の家族は幸せそうに見える。万引きを犯罪とは言わず、置いてあるものを貰ってくる。店が潰れなければ許されると、勝手な理屈を子どもにまで吹き込む。新参の妹は拾ってきただけで、連れ去りにはなるが、身代金は要求していないから誘拐ではないと、同じ屁理屈で誤魔化す。感情移入もできないまま物語は進行する。

 偽物家族は祖母の死によって、あっさりと崩れ始める。綻びから明らかになる家族の秘密は、言い逃れのできない重い犯罪であった。

 日本の社会が抱える闇を描いたのか?そこには声高な批判や告発はない。稀薄な人との繋がりを確認する…そんな時間(とき)は訪れるだろうか?!

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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