岐阜新聞 映画部

映画にまつわるエトセトラ

Rare film pickup

国内最大の地上戦「沖縄戦」。映画はどう描いたか。

2022年08月23日

沖縄戦の悲劇を描いた映画

©2022 映画「島守の塔」製作委員会

マスコミが戦争に加担した戦前の二の舞とならぬよう願う

日本における唯一の地上戦「沖縄戦」で「命どぅ宝、生きぬけ!」と県民の命を守ろうと懸命に努力した2人の官僚、島田叡知事と荒井退造警察部長を描く『島守の塔』が、東海地区ではいち早く岐阜CINEXで公開される。

総務省のWebには「沖縄県は、太平洋戦争で国内最大の地上戦が展開、一般県民を巻き込んだ熾烈な戦闘が繰り広げられ、軍民あわせて20万余の尊い生命、財産、文化遺産を失った。」とある。うち一般県民は94,000人とされている。

  島田知事に関しては、佐古忠彦さんが監督したドキュメンタリー『生きろ 島田叡-戦中最後の沖縄県知事』(2021)という力作があるが、劇映画で取り上げられるのは恐らく初めてであろう。

  沖縄戦の悲劇を描いた映画としては4本ある『ひめゆりの塔』(1953,1968,1982,1995)が有名(1995年の神山征二郎版は8月にロイヤルで公開)だが、ここでは日米双方の視点で描かれた2本の映画を紹介したい。

  日本側は、お盆にロイヤルで公開された『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971/岡本喜八監督)だ。

  私はこれほど戦闘シーンが続く映画は観たことがない。終始砲弾が爆発する音が鳴り響き、人間の死にざまが克明に執拗に描かれる。兵隊の少なさは県民を現地徴収し少年には武器を持たせて補い、少女は看護兵にさせる。

  軍上層部は「本土を守るためには沖縄が犠牲にならなきゃなならない」と命令し、特攻精神で無謀な総攻撃を仕掛け、最後は牛島司令官が「俺は死ぬ、あとはヨロシク」と降伏しないまま自決する。よって米軍の総攻撃は続き、「生きて捕虜になるな」の縛りで住民も自決する。無責任極まりない!が、よくぞここまで突っ込んだ映画を作ったものだ。

  アメリカ側は、『ハクソー・リッジ』(2016/メル・ギブソン監督)だ。

  沖縄戦では、アメリカ兵も12,520人の戦死者がでた(総務省Web)。最も過酷だった前田高地の戦いでは、米軍兵士も腕はもがれ身体は焼けただれ瀕死の重傷を追っている者多数。その彼らを救った衛生兵を主人公にした映画だが、残酷描写には凄まじいものがある。

『島守の塔』には、琉球新報社や沖縄タイムス社など沖縄メディアが製作委員会に名を連ね、岐阜新聞社をはじめとする全国のマスコミがメディアパートナーとなっている。マスコミが戦争に加担した戦前の二の舞とならぬよう願うばかりだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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