岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ

2024年09月26日

潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断

©2023 INDIGO FILM-O’GROOVE-TRAMP LTD-VGROOVE-WISE PICTURES

【出演】ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、マッシミリアーノ・ロッシ、ヨハン・ヘルデンベルグ、パオロ・ボナチェリ、シルヴィア・ダミーコ
【監督】エドアルド・デ・アンジェリス

ヒロイズムとナルシシズムが美化されている

第二次世界大戦は、1939年9月1日のドイツによるポーランド侵攻に始まる。同盟国のイタリアは1940年6月10日に参戦、エジプトやギリシャ等に侵攻したが次第に劣勢となり、1943年9月8日ムッソリーニ退陣後のバドリオ政府が連合国に無条件降伏した。その後ムッソリーニを救出したドイツ軍とイタリア傀儡政権(サロ政権)は、1945年5月まで交戦を続けた(イタリア戦線)。この頃を描いた映画が、ロベルト・ロッセリーニ監督の『無防備都市』(1945/キネ旬4位)『戦火のかなた』(1946/キネ旬1位)である。

本作は、イタリア参戦から程近い1940年10月に起こった実話である。イタリア海軍潜水艦コマンダンテ・カッペリーニが、ジブラルタル海峡を超えて大西洋に入る中、国籍不明の大型輸送船を発見、コマンダンテ号に発砲してきたので撃沈する。正体は中立国のベルギー船籍の貨物船カバロ号であったが、積み荷はイギリス軍の物資だった。救命艇で脱出した船員たちをどう扱うのか?

サルヴァトーレ・トーダロ艦長(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)は決断する。敵国船を無慈悲にも攻撃して沈めたが、戦闘能力を失って助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ。助けるのに躊躇はない。

救命艇が壊れたため、救助した乗組員を潜水艦に搭乗させるが、定員オーバーのため一部は艦橋に残すことになる。ということは潜水艦なのに潜航できない。つまり敵に見つかる危険性が限りなくある。艦長はどう決断するか?

映画の前半で描かれる、潜水艦にからみついた魚雷の鎖を兵士が単身切りに行くシーンや、船乗り同士の友情など、ヒロイズムとナルシシズムが美化されているようなシーンも多々あり、カッコよさが際立ってしまうのは若干鼻につくが、そもそも美談なので許容範囲だ。

イタリア映画における第二次大戦ものは最近では珍しい。殺伐としてない戦争映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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