岐阜新聞 映画部

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この名曲が作られた経緯を紐解く、愛と哀しみと苦しみのボレロ

2024年09月20日

ボレロ 永遠の旋律

© 2023 CINÉ-@ - CINÉFRANCE STUDIOS - F COMME FILM - SND - FRANCE 2 CINÉMA - ARTÉMIS PRODUCTIONS

【出演】ラファエル・ペルソナ、ドリヤ・ティリエ、ジャンヌ・バリバール、ヴァンサン・ペレーズ、エマニュエル・ドゥヴォス
【監督】アンヌ・フォンテーヌ

性的な匂いさえ感じさせる、規則正しい旋律

「ラヴェルのボレロ」は、全体が一つのクレッシェンド(だんだん強く)で出来ていて、2つの主題をリズムもテンポも変えることなく18回繰り返し、最後の2小節で突然変調して終わる、魂へ響くような17分間の音楽劇場である。

3拍子のスネアドラム(小太鼓)のピアニッシモの響きに続くフルートによるソロ演奏からスタートし、主題が繰り返されるごとに徐々に楽器が加わっていき、最後はシンバルの音も高らかにフルオーケストラで最高のフィナーレを迎える。

映画でもたびたび使われ、なかでもクロード・ルルーシュ監督の『愛と哀しみのボレロ』(1981/キネ旬11位)と園子温監督の『愛のむきだし』(2009/キネ旬4位)は、「ボレロ」がフルで使われており強烈な印象を残している。

『ボレロ 永遠の戦慄』は、この名曲がどのような経緯でどう作られたかを紐解いた、まさに「愛と哀しみと苦しみ」のボレロとなっている。

1928年ロシア人のダンサー、イダ・ルビンシュタイン(ジャンヌ・バリバール)からバレエ音楽を依頼されたモーリス・ラヴェル(ラファエル・ペルソナ)は、完成するまでの約3か月間全精力をこの作曲に注ぎ込む。

原型となったスペインの舞踏曲、工場の規則的な機械音、それらをヒントにピアノで演奏し徐々に楽譜に置き換えていく。その芸術的作業を映しつつ、ラヴェルと関わった女性たちがインサートされる。決して順風満帆な人生ではなく、コンクールには落ち続けるしスランプもやってくる。

この後世に残る傑作『ボレロ』は、サラサラサラーと作曲したわけでなく、ラベルの人生の苦しみや哀しみを集めた集大成のような音楽であることがわかる。機械のような規則正しい旋律は、性的な匂いさえ感じさせる。

この映画を観たあと「ラヴェルのボレロ」を聴きたくなってきた。名盤との呼び声高い、クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団の演奏盤がお勧めです。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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