岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ニッポンのサラリーマン モンタナへ行く

2024年07月17日

東京カウボーイ

【出演】井浦新、ゴヤ・ロブレス、藤谷文子、ロビン・ワイガート、國村隼
【監督】マーク・マリオット

日米接触の違和感を巧みに抑えた細心な脚本演出

サラリーマンがスーツを脱ぐ時。

東京。坂井英輝(井浦新)は、食品商社に勤め、主にM&Aを担当しているサラリーマン。合併や買収をする冷淡なイメージがあるが、英輝は企業価値を再発見し、新たな経営方針を模索することに心血を注いでいると自認していた。しかし、自らが担当したある会社の現状を見直した時、そこには合理主義を優先してしまった弊害が存在していることを知る。

社内では直属の上司で副社長、プライベートでは婚約者でもある増田けい子(藤谷文子)と、休日には結婚後の新居を探し。一方、仕事ではアメリカで経営不振に陥っている牧場の売却を進めるように急かされてもいた。

英輝は希少価値の高い "和牛" の生産に切り替えることで、牧場経営を立て直す計画を提案し、アメリカへ乗り込むことになる。

井浦新は、はじめモデルとして活躍していたが、1999年、『ワンダフルライフ』(是枝裕和・監督)で、オーディションを経て主役に抜擢され、俳優デビューを果たしている。その後も、順調にキャリアを重ねた。転機のきっかけとなるのは2008年に公開された『連合赤軍 あさま山荘への道程』で、若松孝二監督と出会ったことだろうが、個人的には、2012年のNHK大河ドラマ「平清盛」の崇徳上皇役が忘れ難い。

権力の座をかけた政争 "保元の乱" の首謀者として、讃岐国に流刑となり、悲運の生涯を送り、のちに怨霊となり都を揺るがせた帝。苦悩する和歌の名手でもあった崇徳上皇の、繊細ゆえに暗部へ堕ちていく様。その狂気を井浦新は舞踏にも見える身体表現で演じ切った。

それまでの芸名であった "ARATA" を本名である井浦新に改めるのは、ドラマ「平清盛」と、映画では同年に公開された若松孝二監督作品『11・25.自決の日 三島由紀夫と若者たち』だった。

モンタナの牧場でプレゼンを始める英輝だったが、そこには思わぬ壁が立ちはだかる。異文化衝突で生じる誤解や反発を乗り越え、遂に居場所を発見する。心地よい時間へ誘ってくれるヒューマンドラマである。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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