岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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俳優草彅剛が挑んだ本格時代劇

2024年07月11日

碁盤斬り

©2024「碁盤斬り」製作委員会

【出演】草彅剛、清原果耶、中川大志、奥野瑛太、音尾琢真/市村正親、立川談慶、中村優子、斎藤工、小泉今日子/國村隼
【監督】白石和彌

脚色過多が碁盤斬りの落ちを弱めた

元ネタは落語

「柳田格之進(やなぎだかくのしん)」は、古典落語の演目で、元は講談のネタだったものを落語の "噺" になおしたもので、明治に活躍した三代目春風亭柳枝が得意とした。

昭和では五代目古今亭志ん生と、子息である十代目金原亭馬生、三代目古今亭志ん朝が得意ネタとした。

藩を追われた武士が世捨て人のように長家住まいをして、町人のような生き方をしながらも、武士としての誇りを失うことない。そして、かつてかけられた冤罪を晴らすため、復讐を決意するという筋だが、これは藤沢周平的な世界を思い浮かべる。そして、この本筋となる復讐=仇討ちは落語の噺にはない。

脚本は加藤正人が書いているが、ノベライズされた小説は「碁盤斬り 柳田格之進異聞」(文春文庫)であり、タイトルからもわかるように落語のネタからははずれている。

柳田格之進を演じるのは草彅剛。アイドル活動の絶頂期のテレビドラマの "道" 3部作が強く印象に残る。余命宣告を受けた教師を演じた「僕の生きる道」(2003年)、妻に家出されて子育てを強いられる銀行員を演じた「僕と彼女と彼女の生きる道」(04年)、自閉症の青年の生き方を描いた「僕の歩く道」(06年)と、それぞれ違う難しい役どころを繊細に演じて、俳優としての評価を獲得した。

映画出演では、代表作と言えるような作品には恵まれなかったが、2020年に公開された『ミッドナイトスワン』では、トランスジェンダーの主人公を体当たり演じ、その危機迫るリアルさは圧巻だった。

時代劇は、2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」で最後の将軍徳川慶喜を演じて以来で、映画では初めての侍もの。

武士の誇り、父親としての娘との絆、心の闇に隠された決意の刃の凄みを見事に体現している。

物語の構造が重なってしまった分、復讐劇も人情劇のいずれもが、些か薄味になってしまったのが惜しまれる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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