岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品アンダーカレント B! 表面からは見えない底流でうごめく人間模様 2023年11月27日 アンダーカレント ©豊田徹也/講談社 2023「アンダーカレント」製作委員会 【出演】真木よう子、井浦新、 リリー・フランキー、永山瑛太、 江口のりこ、 中村久美、康すおん、内田理央 【監督】今泉力哉 すれ違っているようで微妙に触れ合う巧みな会話劇 かなえ(真木よう子)は家業の銭湯を継ぎ、夫の悟(永山瑛太)と穏やかな日常を暮らしていた。 そんなある日、突然、悟が姿を消す。 わけもわからず途方に暮れるかなえだったが、どうにか銭湯の営業を再開できるまでに回復し始めた幾日か後、見ず知らずの男が現れる。 男は堀(井浦新)と名乗り、銭湯組合の紹介でやって来たことを告げ、不可解さを残したまま、住み込みで銭湯で働くことになる。 一方、失踪した悟の行方を探すため、友人から紹介された探偵に頼ることになるのだが、その探偵・山崎(リリー・フランキー)の胡散臭さには不安を覚えるのだった。そして、もう一つの胡散臭い男・堀との奇妙な共同生活も、次第に平穏な日常へと変換していく。 原作は豊田徹也の同名の長編コミックで、フランスなどの海外でも人気を博している作品らしい。派手なアクションや奇想天外な話が展開するわけでもない、淡々としたお話なのに、海外のファンを獲得できる。あらためて、日本のコミックの底力を感じるが、この独特の世界観は、今泉力哉監督の得意とする領域で、その選択センスの良さを痛感することになる。 銭湯の常連客や同級生たち登場人物が内包している、ちょっとおかしな一面が、会話の中でさり気なく化学反応を起こしたり、微妙な炸裂を見せたりする…これはまさに今泉映画ワールド。 本作で浮上するのは謎の数々。悟は何故、突然失踪したのか? 乱入者・堀は一体、何者なのか? ここでは、敢えて深入りし、真相に辿り着く道を半ば放棄しているようにさえ見える。 図らずも、謎の権化のような存在だった探偵・山崎の小出しながら着実な真相究明の仕事ぶりの途中、ふと発した「他人をわかるってどういうこと?」という問いが言い得て妙。静かな映画の水面に波紋を起こす。 安定し過ぎて、ちょっと不満が残った近作からの見事な脱皮を見せる、新たな今泉映画の誕生と評価したい。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (6)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年05月17日 / 一月の声に歓びを刻め 三島有紀子監督が、自分自身と向き合った自伝的映画 2024年05月17日 / 一月の声に歓びを刻め 自らの体験を反映させた三島有紀子監督の渾身作 2024年05月17日 / マリア 怒りの娘 11歳の少女の眼に映る現在のニカラグア more 2023年01月18日 / ギンレイホール(東京都) かつての花街にあった名画座で青春時代を過ごす。 2019年12月25日 / 佐世保シネマボックス太陽(長崎県) 戦前・戦後と造船の街として栄えた繁華街にともる映画の灯 2022年04月13日 / 長崎セントラル劇場(長崎県) 父から引き継ぐ映画館で映画の灯を守り続ける。 more
すれ違っているようで微妙に触れ合う巧みな会話劇
かなえ(真木よう子)は家業の銭湯を継ぎ、夫の悟(永山瑛太)と穏やかな日常を暮らしていた。
そんなある日、突然、悟が姿を消す。
わけもわからず途方に暮れるかなえだったが、どうにか銭湯の営業を再開できるまでに回復し始めた幾日か後、見ず知らずの男が現れる。
男は堀(井浦新)と名乗り、銭湯組合の紹介でやって来たことを告げ、不可解さを残したまま、住み込みで銭湯で働くことになる。
一方、失踪した悟の行方を探すため、友人から紹介された探偵に頼ることになるのだが、その探偵・山崎(リリー・フランキー)の胡散臭さには不安を覚えるのだった。そして、もう一つの胡散臭い男・堀との奇妙な共同生活も、次第に平穏な日常へと変換していく。
原作は豊田徹也の同名の長編コミックで、フランスなどの海外でも人気を博している作品らしい。派手なアクションや奇想天外な話が展開するわけでもない、淡々としたお話なのに、海外のファンを獲得できる。あらためて、日本のコミックの底力を感じるが、この独特の世界観は、今泉力哉監督の得意とする領域で、その選択センスの良さを痛感することになる。
銭湯の常連客や同級生たち登場人物が内包している、ちょっとおかしな一面が、会話の中でさり気なく化学反応を起こしたり、微妙な炸裂を見せたりする…これはまさに今泉映画ワールド。
本作で浮上するのは謎の数々。悟は何故、突然失踪したのか? 乱入者・堀は一体、何者なのか? ここでは、敢えて深入りし、真相に辿り着く道を半ば放棄しているようにさえ見える。
図らずも、謎の権化のような存在だった探偵・山崎の小出しながら着実な真相究明の仕事ぶりの途中、ふと発した「他人をわかるってどういうこと?」という問いが言い得て妙。静かな映画の水面に波紋を起こす。
安定し過ぎて、ちょっと不満が残った近作からの見事な脱皮を見せる、新たな今泉映画の誕生と評価したい。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。